1.はじめに:離職の現状と課題
この春に新入社員を迎えたガソリンスタンドもあるかと思います。また、学校を卒業した学生アルバイトの退職を受け、新人アルバイトスタッフを雇用したガソリンスタンドも多いと思います。ですが、以下のリンクのように新入社員が入社してすぐ辞めてしまうケースが話題になっています。
配属ガチャ、初日に退職…超売り手市場の新入社員の現状 入社先に何を求める?
https://news.yahoo.co.jp/articles/bf644a6188a26e28c16a3ec62a7273cf5d7229d6
「やっぱり無理です」入社初日に退職届を出した“期待の新人”。上司も納得してしまった退職理由
https://nikkan-spa.jp/1967342
このように離職のハードルが低くなっていく中、勤務継続のモチベーションに対する取組みは重要度を高めています。そこで今回の記事では、モチベーションの仕組みを理論に基づいて解説するとともに、調査結果を踏まえて、モチベーション理論をどのように活用すれば、離職を食い止めることが出来るのかを解説していきます。
2.「動機付け=衛生理論」とは
ここからは、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグ氏が、実証研究に基づいて提唱したモチベーション理論「動機付け=衛生理論」を分かりやすく解説していきます。
この理論では、人間のモチベーションは「プラスマイナスゼロ」の状態から始まると考えられています。つまり、仕事に対して何の感情も抱いていない状態です。この中立の状態から、モチベーションは以下の2つの要因によって左右されます。
【充実させることでモチベーションが上がる「動機付け要因」】
動機付け要因は、それを充実させることで職務の満足度が上がり、モチベーションが向上する要因です。具体的には以下が挙げられます。
- 承認:自分が認められていると感じること
- 責任:重要な仕事を任されていると感じること
- 達成感:目標を達成した喜びを感じる
- 仕事そのもの:仕事内容に興味ややりがいを感じること
- 昇進:キャリアアップの機会があること
【充実させてもモチベーション向上に限界のある「衛生要因」】
衛生要因は、それを充実させることで職務の不満足度が小さくなりますが、モチベーションの向上には限界のある要因です。具体的には以下が挙げられます。
- 会社の方針:方向性が明確になっていること
- 上司の監督:上司が自分の働きぶりに興味を持って支援してくれること
- 給与:生活を維持できる水準であること
- 人間関係:同僚や上司との良好な関係
- 労働条件:安全で衛生的な職場環境
ハーズバーグによると、従業員の満足度を高めるためには、まず衛生要因を満たすことが重要です。給与が低すぎたり、人間関係が悪かったりすると、モチベーションは大きく低下します。しかし、衛生要因をいくら改善しても、モチベーションが劇的に向上することはありません。衛生要因の改善は、マイナスをゼロに戻すだけと言えるからです。
一方、「動機付け要因」を満たすことで、モチベーションは上限なく上昇していきます。そこで、「衛生要因」に拘り過ぎることなく「動機付け要因」を充足させていくことが、モチベーション向上のポイントとなります。
では、これを踏まえて若手社員の離職理由と照らし合わせていきます。
3.離職したくなった理由
リクルートマネジメントソリューションズが2023年に公表した社会人1~3年目435名を対象としたインターネット調査の結果では、過去3年以内に自己都合退職をしたことがない方に「会社を辞めたいと思った理由で、影響の大きかったものを最大2つまでお選びください。」という質問に答えていただいたところ、以下の結果になりました。
このように、上位ベスト5は「仕事にやりがい・意義を感じない」(27.0%)、「給与水準が満足できない」 (19.0%)、「自分のやりたい仕事ができない」(12.8%)、「会社の将来性に不安がある」(12.3%)、「労働環境・条件が良くない」(12.3%)となりました。
このうち、「仕事にやりがい・意義を感じない」「自分のやりたい仕事ができない」は、上記モチベーション理論の「動機付け要因」に該当し、「給与水準が満足できない」「労働環境・条件が良くない」は、「衛生要因」に該当することから、若手の早期離職対策としては、両方をバランスよく充実させることが、ポイントと考えることができそうです。
しかし、以下の調査結果からは、違った側面が見えてきます。
4.離職した理由
上記の調査結果は、「過去3年以内に自己都合退職をしたことがない方」を対象としています。ですが、同じ調査で「過去3年以内に自己都合退職したことがある方」を対象に「退職理由で、影響の大きかったものを最大2つまでお選びください。」という質問をしたところ、以下の結果になりました。
このように上位ベスト5は「労働環境・条件がよくない」(25.0%)、「給与水準に満足できない」(18.4%)、「職場の人間関係がよくない、合わない」「上司と合わない」「希望する働き方ができない」(同率14.5%)となり、これらは全てモチベーション理論の「衛生要因」に該当することが分かりました。
つまり、早期退職を防止するためには、「動機付け要因」よりも「衛生要因」を充実させる必要があるということです。
5.まとめ
企業は、衛生要因と動機付け要因の両面から従業員のモチベーション向上に取組む必要がありますが、特に早期離職防止には、給与、労働環境、人間関係などの衛生要因への注力が重要です。ガソリンスタンド経営者や管理者は、これらの理論を理解し、個々の従業員に合わせた取り組みにて離職防止を実現しましょう。
従業員のモチベーション向上は、ガソリンスタンドの活性化と顧客満足度向上にも繋がる重要な課題です。「動機付け=衛生理論」を活用し、職場環境を改善することで、従業員の離職防止と活力を生み出すことが可能となるでしょう。
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