【自己正当化バイアスへの対応】あるガソリンスタンド店長の失敗

コラム

1.あなたは、自分の行動や判断を正当化しようとした経験がありますか?

 誰もが持つ心理的な偏りである認知バイアスのひとつ、「自己正当化バイアス」は、誤った意思決定、人間関係の悪化、葛藤の悪化など、様々な問題を引き起こします。

 この記事では、あるガソリンスタンド店長の失敗事例から、自己正当化バイアスの危険性と克服方法を詳しく解説します。

 自己正当化バイアスとは、自分の行動や判断を正当化しようとする心理的な偏りのことです。これは、人間が常に自分の行動を正しいと信じたいという欲求から生じるものです。しかし、自己正当化バイアスは、以下のような様々な問題を引き起こします。

2.自己正当化バイアスが引き起こす深刻な問題

  • 誤った意思決定: 自分の過去の行動や信念に固執し、新しい情報や異なる視点を受け入れられなくなる可能性があります。
  • 人間関係の悪化: 自分の意見ばかりを主張し、相手の意見を尊重しなくなる可能性があります。
  • 葛藤の深刻化: 自分の間違いを認められず、問題解決が困難になる可能性があります。

 このような自己正当化バイアスによって、悪影響を招いたあるガソリンスタンド店長の事例を見ていきます。

3.A氏の失敗事例:自己正当化バイアスが招いた悲劇

(1)大きな業績を出したA氏

 首都圏のあるガソリンスタンドで店長を担っていたA氏は、接客マニュアルや作業マニュアルなどを作成し、マニュアル通りに接客や作業ができていないスタッフには厳しく指導をしていました。

 時には怒鳴りつけることもあり、その指導の厳しさについてくることのできない部下が退職することも意に介さず、解雇を言い渡したこともあります。

 A氏のそのようなリーダーシップが、その店舗にはうまくハマり、大きな業績を出すことができました。周囲にはA氏に意見を述べることのできる人材がおらず、上司もA氏が業績を向上させていたので、彼の運営方法について問題提起されることもありませんでした。店長経験の浅かったA氏は、自身の店舗運営方法が絶対的であると自信を深めることになりました。

「あたしのマネジメントは完璧やし♪」

(2)A氏の転職

 そのA氏は、家庭の都合で実家のある地方都市へ引っ越し、現地のガソリンスタンドを運営する企業に入社しました。同社の経営者はA氏の実績を踏まえ、社内に改革を起こしてくれると期待し、さっそく店長に抜擢しました。

 A氏は経営者の期待に応えようと、以前の店舗で自分が実施してきた施策を赴任先の店舗にそのまま取り入れようとしましたが、現場スタッフの協力を得ることができませんでした。それどころか反発を招いてしまいました。

 当時のA氏は、以前の店ではその運営方法で大きな実績を出していましたので、自分に非があるという考えを持つことが出来ませんでした。結果として、店舗の雰囲気はどんどん悪化し、A氏は同社を退職することになりました。

「なんでうまくいかんのや」

 A氏には、自分の店舗運営方法が正しく、それ以外の方法は間違っているという、自己正当化バイアスが働いていました。それは既存スタッフの否定につながっていくことから、協力が得られず、反発されるのは当然のことでした。では、このような自己正当化バイアスを克服するためにはどのような方策があるのでしょうか。

4.自己正当化バイアスを克服するための3つのヒント

(1)自分の思考に気づく

 自己正当化バイアスを克服する最初のステップは、自分の思考に気づくことです。自分の考えや感情は、第3者の視点からはどのように見えるのか検討し、それが自己正当化バイアスに基づいているかどうかを判断するようにしましょう。

(2)異なる視点から物事を考える

 物事を異なる視点から考えることは、自己正当化バイアスを克服するのに役立ちます。自分の考えとは異なる意見、A氏で言えば「同業他社から転職してきて突然店長になった人の部下」の立場に立って考えてみると活路が見出せたかもしれません。

(3)フィードバックを求める

 信頼できる人に、自分の行動や判断に対するフィードバックを求めましょう。客観的な意見を取り入れることで、自己正当化バイアスに気付くことが期待できます。

5.自己正当化バイアスを克服し、より良い人生を歩む

 自己正当化バイアスを克服することは簡単なことではありませんが、努力することで影響の最小化を図ることが出来ます。上記のヒントを実践することで、より客観的で合理的な思考ができるようになり、より良い意思決定を下せるようになるでしょう。

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