アンゾフの成長ベクトルでガソリンスタンドの生き残り戦略を考える

コラム

1.アンゾフの成長ベクトルでガソリンスタンドの生き残り戦略を考える

 電気自動車の普及、ガソリンの高騰、人材不足など、ガソリンスタンドは厳しい環境に身を置いています。そこで、今回の記事では、アメリカの経営学者イゴール・アンゾフが提唱した「アンゾフの成長ベクトル」というモデルを使って、ガソリンスタンドの成長戦略を考えてみたいと思います。

 この記事を読むことで、ガソリンスタンドの経営者の皆さんは、自社の現状や目標に合わせて、最適な成長戦略を選択できるようになるでしょう。それでは、早速見ていきましょう。

■アンゾフの成長ベクトルとは?

 アンゾフの成長ベクトルとは、対象とする市場(顧客層)と提供する製品・サービスの2軸によって、戦略を以下の4つに分類したモデルです。

  • 市場浸透戦略:より多くの既存顧客へより多くの既存製品・サービスを提供していく戦略(上図A)
  • 新市場開拓戦略:新規の顧客へ既存の製品・サービスを提供していく戦略(上図B)
  • 新製品開発戦略:既存の顧客へ新規の製品・サービスを提供していく戦略(上図C)
  • 多角化戦略:新規の顧客へ新規の製品・サービスを提供していく戦略(上図D)

  これらの戦略をガソリンスタンドに当てはめてみると以下となります。

■アンゾフの成長ベクトルでガソリンスタンドの戦略を検討する

 例えば、既存顧客である自店の立地するX市の住民に、自店で既に取り扱っているタイヤをより販売していく戦略が「市場浸透戦略」(上図A)です。

 そのようなガソリンスタンドが、X市の隣の自治体Y市の住民にタイヤを販売していこうとする戦略が「新市場開拓戦略」(上図B)です。

 また、自店の立地するX市の住民に自社で収穫した果物を新たに販売していこうとする戦略が「新製品開発戦略」(上図C)です。

 そして、X市の隣の自治体Y市の住民に新たに果物を販売していこうとする戦略が「多角化戦略」(上図D)です。

 なお、これら4つの戦略の中には、次に示すように、ガソリンスタンドに不向きな戦略もあることに注意が必要です。

■ガソリンスタンドにとって不向きな戦略は?

 この4つの戦略のうち、ガソリンスタンドが新市場開拓戦略(上図B)と多角化戦略(上図D)を取ったとしても、効果は限定的と言えるでしょう。その理由として以下が挙げられます。

 まず、新市場開拓戦略(上図B)についてですが、ガソリンスタンドの事業は、地域密着型であり、新市場に進出するには、多店舗展開をする必要があり、多くのコストやリスクがかかることになります。

 また、ガソリンスタンドで取り扱う既存の商品は、差別化が困難です。よって、新市場での競争力を高めるためには、価格競争に陥りがちであり、収益が厳しくなりやすいと言えます。

 次に、多角化戦略(上図D)についてですが、この戦略は、ターゲットとする顧客はこれまで対象としていなかった顧客ですし、取り扱う商品もこれまで扱っていなかった商品です。つまり、ノウハウの蓄積が浅く、慣れない事業をするわけですから事業拡大を狙うにはリスクが高いと言えます。

 そこで、新しい市場を開拓するよりも、既存の市場でのシェア拡大や顧客満足度向上などの市場浸透戦略を検討するほか、新しいニーズに対応した新製品開発戦略を検討した方が効果的と言えます。

■まとめ

 この記事では、アンゾフの成長ベクトルという市場と製品の2軸による成長戦略の分類モデルを用いて、ガソリンスタンドがとるべき戦略を検討しました。その結果、ガソリンスタンドにとっては、新市場開拓戦略や多角化戦略はコストやリスクが高く、効果が低いという課題があることがわかりました。

 そのため、既存の市場でのシェア拡大や顧客満足度向上などの市場浸透戦略や、新しいニーズに対応した新製品開発戦略などを検討することが望ましいと言えます。自社の現状や目標に合わせて、最適な成長戦略の選択にこの記事がお役に立てれば幸いです。

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