■オートバックスの業績悪化とカー用品市場の縮小
オートバックスセブンは、2023年12月18日に、50歳から57歳で勤続10年以上の社員を対象とした早期退職制度を実施すると発表しました。募集人数は100人です。
この背景には、同社の業績悪化があります。オートバックスセブンの2023年3月期の連結売上高は、前期比3.7%減の1,225億円、連結営業利益は同2.3%減の120億円となりました。また、2024年3月期の連結売上高は、前期比4.0%減の1,183億円、連結営業利益は同13.0%減の106億円と、さらに悪化が見込まれています。
このオートバックスの業績悪化は、カー用品市場全体の縮小を意味する可能性があります。実際、オートバックスの2023年3月期の決算説明資料によると、業績悪化の要因は、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛や、半導体不足による新車販売の減少など、業界全体に影響する要因によるものでした。
新型コロナウイルス感染症は第5類感染症になり、外出自粛は緩みましたが、テレワークを継続する動きは根強く、カー用品の販売は苦戦が予想されます。
ガソリンスタンドにとっては、ガソリンや軽油といった燃料油の需要減退だけでなく、カー用品の需要減退という脅威が訪れていると考えるべきでしょう。そこで、当記事ではそのような環境下でガソリンスタンドが生き残るための戦略を見ていきます。
■アンゾフの成長ベクトルで考えるガソリンスタンドの戦略
アンゾフの成長ベクトルとは、市場(顧客層)と製品・サービスの2つの要素に注目して、事業の成長戦略を4つのタイプに分けたモデルです。
- 市場浸透戦略:既存の顧客層へ、既存の製品・サービスをより多く販売する戦略(上図A)。例えば、ガソリンスタンドの自店が立地するX市の住民という既存の顧客に、自店で扱っているガソリンなど既存の商品をさらに販売する戦略です。
- 新市場開拓戦略:新規の顧客層へ、既存の製品・サービスを販売する戦略(上図B)。例えば、ガソリンスタンドの自店が立地するX市の住民という既存の顧客ではなく、隣のY市の住民という新規の顧客に、自店で扱っているガソリンなど既存の商品を販売する戦略です。
- 新製品開発戦略:既存の顧客層へ、新規の製品・サービスを販売する戦略(上図C)。例えば、ガソリンスタンドの自店が立地するX市の住民という既存の顧客に、これまで扱っていない新規の商品・サービスを販売する戦略です。
- 多角化戦略:新規の顧客層へ、新規の製品・サービスを販売する戦略(上図D)。例えば、ガソリンスタンドの自店が立地するX市の住民という既存の顧客ではなく、隣のY市の住民という新規の顧客に、これまで扱っていない新規の商品・サービスを販売する戦略です。
これらの4つの戦略は、企業が成長するための基本的な方向性を示しています。アンゾフの成長ベクトルは、企業が環境の変化に柔軟かつ効果的に対応するために、市場と製品の組み合わせを検討する手助けとなります。ただし、これらの戦略の中には、ガソリンスタンドにとって適さない戦略もあります。
■ガソリンスタンドにとって適さない戦略は?
この4つの戦略の中で、ガソリンスタンドなど店舗ビジネスを手掛ける事業者が、新市場開拓戦略(上図B)や多角化戦略(上図D)を実行したとしても、効果が期待できない理由は以下の通りです。
まず、新市場開拓戦略(上図B)に関しては、ガソリンスタンドの事業は、地域に密着したものであり、新規市場に参入するには、店舗数を増やす必要があり、コストやリスクが高くなります。
さらに、ガソリンスタンドで販売する既存の商品は、他社との差別化が難しいです。そのため、新規市場で勝負するには、価格を下げることになりがちであり、利益が出にくくなります。
次に、多角化戦略(上図D)ですが、この戦略は、今までとは違う顧客に、今までとは違う商品を売るというものです。つまり、全く経験のない事業に挑戦するということで、事業拡大のためにはリスクが高いと言えます。
そこで、新しい市場に進出するよりも、既存の市場でのシェアを高めたり、顧客の満足度を上げたりする市場浸透戦略や、新しいニーズに応える新製品開発戦略を考えるべきです。ここからは、ガソリンスタンドにおける、新製品開発戦略の事例を見ていきます。
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