ガソリンスタンドの経営者が持つバイアスに潜むリスクとその対策

コラム

1.はじめに

 バイアスとは、「先入観」「偏見」「偏り」といった意味を持つ言葉です。心理学やビジネスの領域では、認識の歪みや思考の偏りを指し、合理的な判断を妨げる心理現象として捉えられています。このバイアスはいくつかの種類があり、誰もが持っているものです。

 例えば、ある企業の経営者に経営コンサルタントが提示した改善案は、そのコンサル自身に刷り込まれたバイアスが影響を及ぼしています。また経営者が、経営コンサルからもらった改善案に対して、できない理由ばかり述べ、やれる方法を考えようとしない場合もバイアスに影響されています。

 よって、私たちが意識するべきは、自分にはバイアスがあるということを認識するとともに、そのバイアスの種類を知り、自分の言動がバイアスに支配された結果ではないかと常に自己検証することです。

 そこで今回の記事では、できない理由ばかり述べ、やれる方法を考えようとしないという思考パターンを事例として取り上げ、この場合はどのようなバイアスに支配されているのかを見ていくとともに、その対策を検証します。

2.できない理由に着目してしまうバイアス

 できない理由ばかり述べてしまい、やれる方法を考えようとしない場合は、以下のバイアスに陥っている可能性があります。

(1)損失回避バイアス

 人は利益を得ることよりも、損失を避けることを優先する傾向があります。新しいことに挑戦すると失敗するリスクも伴うため、そのリスクを恐れて、できない理由に着目し、挑戦を躊躇してしまうことがあります。

 例えば、あるガソリンスタンドの経営者が、これまで実施していなかった中古車販売ビジネスに進出するかどうかという経営判断をする場合、失敗するリスクを過大に評価してしまい、進出を見送るといった場合に当てはまるでしょう。

(2)自己防衛バイアス

 人は自分の能力や判断を過大評価し、失敗を認めず、自身を防衛したいという心理があります。そのため、過去の失敗体験から、「自分はできない」と思い込み、新しいことに挑戦することを避けてしまうことがあります。

 例えば、あるガソリンスタンドの経営者が、過去に洗車会員制度であまり収益が上がらず、撤退した経験があったとします。そして、新たに洗車サブスク制度を立ち上げるかどうかという経営判断をする場合において、過去の体験を強く意識しすぎて、立ち上げを見送るといった場合に当てはまるでしょう。

(3)ネガティブ思考

 人はネガティブな情報の方が、ポジティブな情報よりも印象に残りやすいという傾向があります。そのため、ニュースや周囲の意見などから、ネガティブな情報ばかり取り入れてしまい、できない理由ばかりを探してしまうことがあります。

 例えば、あるガソリンスタンドの経営者が、電気自動車用充電器を新たに導入したものの、業績が上がらなかったという同業者の情報を得たとします。そして、自社に新たに充電器を導入するかどうかという経営判断について、同業者の失敗事例を強く意識しすぎて、他の要素を検討せずに導入を見送るといった場合に当てはまるでしょう。

 では、これらのバイアスがどのような影響を及ぼすのか、そしてどのように対策をするべきなのでしょうか。以下で見ていきます。

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