1.静岡県知事の発言から見る職業差別
静岡県の川勝平太知事は、今年4月1日の入庁式で、新規採用職員を前に「実は静岡県、県庁というのは別の言葉でいうとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方」(原文ママ)と発言をしました。
これに対して、職業差別につながるなど否定的な意見が相次ぎ、知事はこの発言を撤回しました。確かにこの発言を裏返すと、野菜を売ったり、牛の世話をしたり、ものづくりに携わったりする人は、頭脳が悪く知性が低いとも読めてしまいます。
今回の記事は、このような偏見に敏感なガソリンスタンドの関係者や、自身の仕事を「底辺職」と感じている方に向け、そのような認識とどう向き合うべきか述べていきます。
2.ガソリンスタンド業界に対するネガティブな発言
ガソリンスタンド業界内には自身の仕事を「底辺職」と認識する風潮がありました。それを象徴する事例として、ある高校の教師が、成績の悪い生徒に向かって「このままの成績だとガソリンスタンドにしか就職できないぞ」と言い放ったことが挙げられます。
また、かつて私がガソリンスタンドの現場に身を置いていた頃に、当時の私の上司が「ガソリンスタンドの仕事は肉体労働のくせに、接客も絡むから愛想も良くしないとならない。まったくタチが悪い仕事だ」と言ったことがあります。
さらには、私の知り合いから「スタンドはしょせん油屋」と言われたり、自称知的労働者から「ガソスタってブルーカラーだろ?」という発言をもらったこともあります。なお、ブルーカラーは、肉体労働に従事する方の作業服や制服が青系であったことから、英語の「青い襟(blue collar)」が語源となって、現場作業に従事する労働者を指します。
さて、このような発言の根底には何があるのでしょうか。
3.認知バイアスとは
認知バイアスは、心理学的な現象であり、人間が情報を処理する際に、客観的な事実から逸脱し、解釈に基づいて主観的な見解や判断を形成する傾向を指します。このバイアスは、情報を解釈・評価する際に生じ、通常、無意識的に発生します。
つまり、ガソリンスタンドを卑下するこれらの発言は、客観的な事実ではなく、偏見に基づく解釈です。よって、これらの発言を受けて「ガソリンスタンドの仕事は底辺職だ」と解釈するもしないも自分次第だということです。
にも拘らず、私たちはなぜ、他人の解釈に振り回されてしまうのか、その理由を詳しく見ていきます。
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