１．ガソリンスタンド商品の出前販売と高齢者の見守り活動で経営革新を目指す事例
■経営革新計画とは
同社は、関東圏内で1店舗のガソリンスタンドを運営する企業です。当時創業20年を迎えようとしており、経営者の他に、正社員とパートタイマー各1名の合計３名で事業を展開しておりました。当時は3期連続で売上が減少しており、危機感を抱いていた経営者は、地元の商工会に勧められた経営革新計画の策定に取り組むことにしました。
経営革新計画とは、中小企業が新しい事業に取り組むことで、経営の革新を目的とした計画です。同社は経営革新計画の策定に取り組むことにしたものの、この時点では新しい事業のテーマは決まっていませんでした。
そこで、今回の記事では、同社がどのようにして新しい事業を見出していったのか、ご紹介していきます。この記事が、何か新しいことを始めたいものの、どのような内容で始めるべきかという課題を抱えている方の参考になればと思います。
なお、経営革新計画の制度について、詳細はこちらのリンクをご覧ください。
■同社の強みと弱み、外部環境の分析
同社は、多様な車両のメンテナンスに対応ができるほか、長年の業歴に基づき、多数の顧客情報を保有しており、また、信頼関係を構築している強みがありました。反面、燃料油販売の収益性が低く、資金的に店舗の改装が困難で、設備の老朽化が進んでいるという弱みもありました。
一方、外部環境としては、近隣のセルフスタンドは、車両のメンテナンスが得意ではないという機会があるものの、価格競争が激しいという脅威が存在していました。
■新しい事業のテーマの見出し方
これまで同社は、洗車やエンジンオイル交換などの車両メンテナンスは、ご来店いただいた顧客から受注していました。これを強化するべく、既存顧客のうち高齢層を中心に、ご自宅へ電話をして、給油状況と併せて車両メンテナンスの状況を伺い、積極的に車両の引き取りに出向くこととしました。そして、引き取った車両は店内でメンテナンス作業を行い、顧客の自宅へ納車をしに行くこととしました。
この引き取り納車の際に、特に一人暮らしをしている高齢の顧客に対しては、玄関や車庫、庭の状態などの生活ぶりを観察し、変化があった場合は、別居する家族などへ連絡をするといった、見守り活動も併せて行うこととしました。
店舗型ビジネスは往々にして、来店を待つだけになりがちです。しかし、事業者側から顧客宅へアプローチをするという、いわゆる「ガソリンスタンド商品の出前販売」をすることによって、需要の掘り起こしが可能となります。
なお、それまでも顧客から要望があれば、引き取り納車は実施していましたが、今回の経営革新計画では、一人暮らしの高齢者を優先とした架電リストを作成し、定期的に電話をすることとしました。
また、引き取り納車の際に、庭や玄関から伺える生活ぶりにも配慮し、変化があったら対応する見守り活動を実施することは、独居の高齢者が増加する中、社会的に意義のある活動と言えるのではないでしょうか。
■まとめ
この事例から、新しい事業を始めるためには、自分たちの強みと弱み、外部環境の分析が重要であることがわかります。また、来店型ビジネスを訪問型にシフトするといった視点の切り替えや、高齢者の独居問題といった社会的な課題に対応することも事業の成功につながることがわかります。この記事が、新しい事業を見出すヒントになれば幸甚です。
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