1.中古トラック販売店の経営革新計画事例:ビジョン達成のための課題設定
一部大手企業の不正により、中古車販売業界は風評被害を受け、業績が厳しくなっていますが、かつて、ある中古トラック販売店は、経営革新計画を作成することで、業績を回復させました。
そこで、同社の経営革新計画を事例として取り上げ、経営革新計画の作成方法を解説していきます。今回は当該計画書内「ビジョン達成のための課題」の記載ポイントについて述べていきます。
なお、経営革新計画の制度については以下の記事をご参照ください。
■経営革新計画「ビジョン達成のための課題」策定の重要性
経営革新計画は、中小企業が新たな事業に取り組み「経営の相当程度の向上」を目的に策定する中長期的な経営計画ですが、当該計画に「ビジョン達成のための課題」を記載する重要性として、以下の2つが挙げられます。
(1)現状とのギャップを把握し、目標を達成するための具体的な取り組みを検討する
前回の記事で取り上げた「ビジョン」は、企業が目指す将来像です。しかし「ビジョン」を達成するためには、現状とのギャップがあることを認識する必要があります。
「ビジョン達成のための課題」を記載することで、現状とのギャップを明確にし、目標を達成するための具体的な取り組みを検討することができます。
(2)経営目標の達成を図る
経営革新計画には、経営目標を達成するための取り組みが必要です。「ビジョン達成のための課題」を記載することで、経営目標を達成するための取り組みを検討し、計画の実現性を高めることができます。
では、「ビジョン達成のための課題」を見出すポイントはどのようなものなのでしょうか。
■経営革新計画「ビジョン達成のための課題」策定のポイント
経営革新計画のビジョン達成のための課題を見出すポイントは、以下の3つです。
(1)現状分析を踏まえる
ビジョン達成のための課題を明確にするために、これまでの記事で見てきた「当社の強み・弱み」「当社の外部環境」といった現状分析を踏まえる必要があります。
現状を正しく認識し、それを踏まえて見出した課題は、妥当性が高く、その解決は業績拡大に直結しやすいわけですが、現状分析の結果を踏まえない課題を設定する事例も散見されますので、注意が必要です。
(2)ビジョンを明確にする
ビジョン達成のための課題を見出すためには、前回の記事で見てきたビジョンを明確にする必要があります。ビジョンとは、自社が将来どうなりたいかという目標です。ビジョンが明確になっていないと、何を改善すべきかが見えにくくなるため、ビジョンを明確にすることが重要です。
(3)ビジョンと現状のギャップを分析する
ビジョンが明確になったら、ビジョンと現状のギャップを分析しますが、ギャップが大きいほど、課題は大きくなります。ギャップを分析することで、自社がどの分野を改善すべきかが見えてきます。具体的には、以下の項目を検討するとよいでしょう。
- 売上高・利益率・営業利益率などの経営指標の目標値と現状値のギャップ
- 顧客ニーズと自社の商品・サービスのギャップ
- 競合他社との競争力におけるギャップ
- 経営資源の有効活用度におけるギャップ
これらの項目を検討することで、自社のビジョン達成のために取り組むべき課題が見えてくるでしょう。
このように、経営革新計画を作成する際には、現状分析を徹底し、ビジョンを明確にして、ビジョンと現状のギャップを分析することが重要です。また、外部環境の変化や従業員の意識や能力も考慮して、課題を見出すようにしましょう。
今回の事例で取り上げた中古トラック販売店は、以下の内容の課題を挙げましたが、実際の経営革新計画では、より具体的に示しています。
(1)顧客層の拡大と売上増加
高額車両の販売比率を下げ、低価格車両の販売比率を高めることで、顧客層を拡大し、売上増加を目指す。
(2)業務効率化と生産性向上
人材の確保・育成と代表取締役が担う業務を部下に委譲することにより、業務効率化と生産性向上を目指す。
■経営革新計画「ビジョン達成のための課題」策定のまとめ
経営革新計画の「ビジョン達成のための課題」を明確にすることで、現状とのギャップを把握し、目標を達成するための具体的な取組みを検討することができます
課題を策定する際には、現状分析を踏まえて、ビジョンを明確にし、ビジョンと現状のギャップを分析することが重要です。
今回の事例で取り上げた中古トラック販売店は、顧客層の拡大と売上増加、業務効率化と生産性向上という2つの課題を挙げました。これらの課題を解決するために、具体的な取組みを実施することで、業績の回復を実現したのです。
経営革新計画を作成する際には、自社の現状とビジョンをしっかりと把握し、課題を明確にすることで、より効果的な計画の策定につなげることができます。
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