ガソリンスタンドが人材の流出を防ぐには?ジョハリの窓でコミュニケーションを改善する方法

コラム

1.ガソリンスタンドが人材の流出を防ぐには?ジョハリの窓でコミュニケーションを改善する方法

■ガソリンスタンドが人材で差別化するべき理由

 私は21年間ガソリンスタンド運営会社に勤務し、在職中に中小企業診断士の資格を取得しました。その後、経営コンサルタントとして独立し、15年間、ガソリンスタンドをはじめ、多くの店舗系や車関連ビジネスの経営改善に携わってきました。今回は、私の経験から、ガソリンスタンドで働く人材の定着率を高めるために必要なことをお伝えしたいと思います。

 ガソリンスタンドで取り扱う商品は、他店と差別化が困難です。よって、価格競争に陥りがちですが、収益性を高めるためには、人材で差別化する方向を模索するべきと言えます。

 つまり、モチベーションが高く、接客態度がキビキビしており、顧客とのコミュニケーションが上手で、車の知識が豊富なスタッフを多数そろえていれば、フルサービスでもセルフサービスであっても、差別化要因となるでしょう。しかし、現実は厳しいです。

■ガソリンスタンドの人材が不足している理由

 差別化を図りたくても、そもそも人材が不足していて、それどころではないガソリンスタンドが多いのも事実です。特に若い世代のスタッフは、仕事にやりがいを感じずに辞めてしまうケースが多く見られます。

 厚生労働省の雇用動向調査によると、令和3年8月のガソリンスタンド店員の離職率は、全産業平均の1.4%に対して2.5%と高く、入職率も1.6%と低いことから、人材の流出が問題になっています。

 私の経験上、人材不足を引き起こしている大きな要因のひとつに、店長とスタッフの間にコミュニケーションのギャップがあることが挙げられます。

 では、どうすれば、店長とスタッフのコミュニケーションを改善し、人材の定着率を高めることができるのでしょうか?私がおすすめするのは、ジョハリの窓というツールを活用することです。以下で詳しく見ていきます。

■ジョハリの窓とは  

 ジョハリの窓とは、心理学者ジョセフ・ルフトとハリ・インガムが考案した、自己理解と人間関係の向上に役立つツールです。自分自身のことを4つの窓に分けて考えることで、コミュニケーションの質を高めることができます。

 4つの窓は以下のようになります。

  • 開放の窓:自分も他人も知っている自己のこと。例えば、性格や趣味など。
  • 盲点の窓:自分は知らないが、他人は知っている自己のこと。例えば、癖や口癖など。
  • 秘密の窓:自分は知っているが、他人は知らない自己のこと。例えば、過去の経験や悩みなど。
  • 未知の窓:自分も他人も知らない自己のこと。例えば、潜在的な能力や可能性など。

 ジョハリの窓の目的のひとつに、開放の窓をできるだけ広げることが挙げられます。開放の窓が広いということは、自分と他人の認識が一致しているということです。つまり、自分のことを正しく理解してもらえているということです。これは、信頼関係の構築やコミュニケーションの円滑化につながります。

 逆に、開放の窓が狭いということは、自分と他人の認識にズレがあるということです。つまり、自分のことを正しく理解してもらえていないということです。これは、不信感や誤解を生み、コミュニケーションの障害になります。

 では、店長は開放の窓をどのようにして広げるべきなのでしょうか。

■開放の窓を広げる方法

 たとえば、自分は仕事でどんなことにやりがいを感じているのか、どんなことが苦手なのか、毎日どんなことに悩んでいるのか、趣味は何なのか、休日は何をしているのかなど、自分のことを部下へ率直に話すことです。店長が自分の弱点を隠さずにオープンにすることで、職場の雰囲気が良くなる効果があります。

 ここでのポイントは部下をリスペクトした上で、自己開示するということです。これをせずに行う自己開示は、単なる独白であり、部下は店長の話に興味を持てません。部下をリスペクトし、部下にとって有用な店長の自己開示を意識しましょう。

 次のステップとして、開放の窓を横に広げる取り組みをします。具体的にはフィードバックを聞くことです。

 

 自己開示をすることで、部下が「うちの店長は何でも話してくれる人だ」と感じるようになれば、フィードバックをくれることが期待できます。そして、店長がフィードバックをしっかりと受け入れるようにすれば、部下は「うちの店長は何を話しても大丈夫な人だ」と思うようになります。これがコミュニケーションの円滑化と言えます。

 自己開示とフィードバックは、相互に影響し合います。自己開示をすることで、部下は自分に対してフィードバックをしやすくなります。フィードバックを受けることで、自分は部下に対して自己開示をしやすくなります。このように、自己開示とフィードバックを繰り返すことで、開放の窓をどんどん広げることができます。

 これにより、コミュニケーションが円滑化してくると、部下が職場の改善点を提案し、それに店長が応じることでより働きやすい職場になったり、店長に悩みを打ち明けたりすることで、定着率が向上することが期待できます。

■まとめ

 今回は、ジョハリの窓を活用することで定着率向上につながる方法を紹介しました。 4つの窓(開放の窓、盲点の窓、秘密の窓、未知の窓)を知り、自己を開示し、他者の視点を知ることで、コミュニケーションの円滑化を図ることができます。 そのためには、以下の2つのポイントを押さえる必要があります。

  • 自分の生活や思考などを自己開示することで、開放の窓を下に広げる
  • 部下からのフィードバックを聞くことで、開放の窓を横に広げる

 これらの取り組みを実践することで、自分とスタッフの関係性を改善し、人材の定着率を上げることができるでしょう。ぜひジョハリの窓を試してみてください。

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