1.はじめに
チームの成功には、メンバーが安心して意見やアイデアを言い合い、互いに協力して目標達成に取組める心理的安全性の高い環境が不可欠です。
しかし、メンバーが萎縮して発言を控えてしまったり、意見の衝突を避けようとしたりして、真のイノベーションや創造性が生まれないという課題を抱えているガソリンスタンドも数多くあります。
そこで本記事では、まず心理的安全性の重要性を説き、次にそれを高めるためのリーダーシップについて考察します。
2.心理的安全性の重要性:ハーロウの実験から学ぶ
(1)愛着形成と心理的安全性の関係
ハリー・ハーロウは、愛着形成に関する研究で有名なアメリカの心理学者です。代表的な研究である「代理母実験」では、アカゲザルの赤ちゃんを母親から隔離し、針金製の代理母と布製の代理母を与えました。
針金製の代理母は、底面に円形の台座が設置され、台座から垂直に針金が伸びる棒状の構造となっており、赤ちゃん猿がしがみつくための支柱となります。そして、棒状の先端に、ミルクの入った哺乳瓶が取り付けられています。
布製の代理母も、底面に円形の台座が設置され、台座から垂直に針金が伸びる棒状の構造となっていますが、その周囲は布で包まれており、その内部にはヒーターが設置され、温かくなっています。ただし、ミルクの入った哺乳瓶は取り付けられていません。
実験の結果、赤ちゃん猿は空腹時にのみ針金製の代理母に近寄り、ミルクを飲みました。しかし、それ以外の時間は布製の代理母と接触しました。
この実験から、愛着形成には「接触」と「温かさ」が重要であることが示唆されます。このことは、ガソリンスタンドの経営者や店長が、メンバーの信頼を得て、心理的安全性を構築するには、給料の額だけに拘るのではなく、積極的なコミュニケーションや温かいフィードバックが必要であるとも言えるでしょう。
そして、さらに実験を進めると、興味深い事実が明らかになりました。
(2)未知への挑戦と心理的安全性の重要性
次にハーロウの実験では、針金製の代理母と赤ちゃん猿だけの檻の中に、蛇のおもちゃを入れてみました。すると、赤ちゃん猿は怖がって、檻の隅にうずくまってしまいました。
そして、檻の中を布製の代理母と赤ちゃん猿だけの状況にして、蛇のおもちゃを入れたところ、赤ちゃん猿は布製の代理母にしがみつきました。そして、次第に蛇のおもちゃに興味を抱き、それに近づくようになりました。
これは、心理的安全性があることで、未知のものへの恐怖や不安を克服し、探求心や冒険心を育むことができることを示唆しています。よって、ガソリンスタンドの経営者や店長が心理的安全性を構築することで、メンバーのチャレンジングな姿勢を引き出すことに繋がると言えるでしょう。
以下では、この心理的安全性を構築するために、経営者や店長がとるべきリーダーシップについて見ていきます。
3.成功を導くリーダーシップ:PM理論
(1)P機能とM機能
PM理論とは、日本の社会心理学者である三隅二不二氏によって提唱されたリーダーシップ理論です。この理論では、リーダーシップは「目標達成機能(P機能)」と「集団維持機能(M機能)」の2つの要素から構成されると考えます。
P機能(Performance function)とは、目標達成のために必要な行動を指します。具体的には、目標設定、計画策定、指示・指導、評価などが含まれます。M機能(Maintenance function)とは、集団を維持するために必要な行動を指します。具体的には、メンバー間のコミュニケーション促進、人間関係の調整、士気高揚などが含まれます。
PM理論では、これら機能の高低を組み合わせ、リーダーシップスタイルを4つに分類しています。
(2)4つのリーダーシップ
PM理論では、それぞれの機能の高低によって、リーダーシップを以下に分類しています。
- PM型は、目標達成と集団維持の両立に優れた理想的なリーダーと言えます。
- Pm型は、短期的な成果は上げやすいですが、メンバーの負担が大きくなりやすく、数字に直結する意見や行動でないと認められにくいという点で、心理的安全性は低いリーダーシップスタイルと言えます。
- pM型は、メンバーとの良好な関係を築きやすいですが、目標達成が遅れやすく、ぬるま湯的なリーダーシップスタイルと言えます。これは、一見心理的安全性が高いように見えますが、成果が出ないため、チームの規模を維持しにくくなります。よって、メンバーは次第に削減されていくことから、心理的安全性は低いリーダーシップスタイルと言えます。
- pm型は、目標達成も集団維持もできないリーダーシップスタイルであり、当然のことながら、メンバーの心理的安全性が低いリーダーシップと言えます。
以上より、チームの心理的安全性を高めるためには、目標の達成とチームワークの向上を実現させるPM型のリーダーシップスタイルが必要と言えます。これによって、チームの挑戦的な風土がより強化されると言えるでしょう。
4.まとめ
ハリー・ハーロウの代理母実験は、愛着形成と心理的安全性の重要性を示唆しています。心理的安全性の高い環境では、メンバーは安心して意見やアイデアを言い合い、互いに協力して目標達成に取り組むことができます。
PM理論におけるPM型リーダーは、目標達成と集団維持の両立に優れているため、心理的安全性の高いチームを築きやすいと言えます。一方、それ以外のリーダーは、心理的安全性が低くなる傾向があります。
チームの成功には、心理的安全性の高い環境が不可欠です。リーダーは、PM理論を参考に、自身のリーダーシップタイプを理解し、必要に応じて改善していくことが重要です。
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