同社の主たる事業は飲食店の運営ですが、新型コロナウイルス感染症の影響によりイートインの需要が激減してしまいました。業績を立て直すためにテイクアウトやデリバリーも検討しましたが、同店が提供する料理の品質が担保できないため、オンラインの料理教室を立ち上げました。
そして、この料理教室の集客力向上を目的に、小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>を活用することとし、申請をした結果、採択されました。そこで、同社が作成した計画書の内容から、採択を引き寄せる書き方を見ていきます。
下図は当補助金を申請する際に作成する「【様式1】経営計画および補助事業計画」の構成ですが、今回のコラムでは赤枠部分<経営計画>「2.新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策」の書き方について見ていきます。なお、当コラムの内容は2022年2月20日時点の情報に基づいています。
1.持続化補助金【低感染リスク型ビジネス枠】に採択された飲食店の事例 [新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策編]
持続化補助金【低感染リスク型ビジネス枠】に採択された飲食店の事例 [新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策編](1)見出しを設ける
当欄のタイトルは「新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策」であり、計画書フォーマットの但し書きには※新型コロナウイルス感染症による自社の経営や事業環境への影響を記載してください。また、現在取り組んでいる対策を記載してください。とあります。
これらのことから、当欄は「新型コロナウイルス感染症の影響」と「既に取り組んでいる対策」を記載する欄であることを強く意識する必要があります。これに対して同社が当欄に記載した内容のうち「新型コロナウイルス感染症の影響」に該当するのは「売上が激減した」という一文のみでした。
これは何を書くべきかをしっかり確認しなかった結果であり、採択にポジティブな影響は及ぼさなかったと考えられます。このようなミスを防ぐためには【新型コロナウイルス感染症の影響】と【既に取り組んでいる対策】という見出しを設け、それに沿った内容を記載することが有効と考えられます。
持続化補助金【低感染リスク型ビジネス枠】に採択された飲食店の事例 [新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策編](2)影響を数値で記載する
一般的に補助金には、窮地に陥った事業者を救済する目的はなく、そのような目的を持つのは給付金とされます。ですが、小規模事業者持続化補助金【低感染リスク型ビジネス枠】は、窮地に陥った飲食店を救済する意図が感じられます。
そうでなければ、提出させる計画書に新型コロナウイルス感染症の影響を書かせる当欄を設ける必要はありませんし、申請時のルールブックである公募要領内の「審査の観点」に以下を記述する必要もないでしょう。
よって、新型コロナウイルス感染症によるネガティブな影響が大きければ大きいほど採択は有利になることがうかがえ、そのためには影響の大きさを訴求する必要があります。
同店は上でご紹介したように「売上が激減した」とだけ記載していましたが、「売上が〇%減少した」と数値を用いて影響の大きさを訴求するとより採択の可能性が向上したのではないでしょうか。
持続化補助金【低感染リスク型ビジネス枠】に採択された飲食店の事例 [新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策編](3)書くべき欄に書くべき内容を記載する
同店が当欄に記載した内容には、「自店の強み」や「今後の方針」が盛り込まれていました。ですが、これらは今回見ている<経営計画>「2.新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策」欄に記載するべき内容ではなく「1.自社の事業概要」欄に記載するべき内容です。なぜなら、当欄のフォーマットには以下の但し書きがあるからです。
※自社の概要や経営状況、課題、特徴、自らが製造・販売・提供している商品・サービスの内容や市場動向等について記載してください。また、自社の経営方針・目標等についても記載してください。
同社が記載した「自店の強み」や「今後の方針」は、上記の太字部分「特徴」と「自社の経営方針」に該当すると解釈できます。書くべき欄に書くべき内容を書かないと、読み手としては内容が散乱している印象を抱き、計画書の理解もしにくくなり、採択にポジティブな影響は及ぼさないと考えられます。
今回のコラムでは、小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型>に採択された計画書の<経営計画>「2.新型コロナウイルス感染症の影響・既に取り組んでいる対策」から、採択を引き寄せる書き方として(1)見出しを設ける、(2)影響を数値で記載する、(3)書くべき欄に書くべき内容を記載する、を挙げました。
次回のコラムは、今回同様に同社の事例を用いて<補助事業計画>「2.補助事業の内容」を見ていきますが、同社の事例を採り上げた前回のコラムは以下となります。
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