油外商品の販売拡大に選択と集中が有効な理由をガソリンスタンドの事例から考える

コラム

1.はじめに

 この記事では、ガソリンスタンドが洗車やタイヤなど燃料油以外の商品、つまり油外商品の販売を拡大するための方策を述べていきます。そのポイントは、多岐にわたる油外商品すべてを売ろうとするのではなく、特定の油外商品に集中して販売していくべきであるという点です。このことを戦略論と事例を踏まえて解説していきます。

2.3つの基本戦略

 アメリカの経営学者であり、ハーバード・ビジネススクール教授として著名なマイケル・ポーターは、企業が競争優位性を築き、持続的な成長を達成するための基本戦略として、以下に示す3つを提唱しています。

「3つの基本戦略があるんだど」
  1. コスト・リーダーシップ戦略:業界内で最も低コストで製品やサービスを提供することで、競争優位性を確立する戦略。
  2. 差別化戦略:顧客に独自の価値を提供することで、競合他社との差別化を図り、競争優位性を確立する戦略。
  3. 集中戦略:特定の顧客層や市場に焦点を絞り、限られた事業に集中することで、競争優位性を確立する戦略。

 このうち、集中戦略は、ポーター教授が特に重要視している戦略です。

3.集中戦略が有効な理由

 集中戦略が有効な理由として、以下の3つが挙げられます。

(1)限られた資源を集中的に活用できる

 企業には、人・物・金・情報などの経営資源がありますが、それは無尽蔵ではありません。集中戦略を採用することで、限りのある資源を特定の事業に集中させ、最大の効果を発揮することができます。

(2)深い専門知識と技術を蓄積できる

 特定の事業に集中することで、企業はその事業に関する深い専門知識と技術を蓄積することができます。これは、顧客のニーズをより深く理解し、高品質な商品やサービスを提供することにつながります。

(3)強力なブランドイメージを構築できる

 特定の事業に集中することで、企業はその事業に関する強力なブランドイメージを構築することができます。これは、顧客の信頼を獲得し、競合他社との差別化を図ることにつながります。

「集中戦略が効果的だんだいね」

 次に、タイヤに特化した集中戦略で業績を拡大させたガソリンスタンドの事例をご紹介します。

4.集中戦略で成功したガソリンスタンドの事例

 同店は、主力スタッフがタイヤ販売を得意としていたことから、油外商品のうちタイヤに集中することにしました。そして、タイヤ販売を拡大するためにマーケティングの4Pを活用しました。

 マーケティングの4Pとは、Product(製品)、Price(価格)、Place(チャネル)、Promotion(販売促進)の頭文字を取ったものです。これらの要素をひとつひとつ検証することで、ヌケモレのない視点からマーケティングの展開が可能となります。具体的には以下の取組みを行いました。

「4つの取組みをしたんだどさ」

(1)Product(製品)面での取組み

 

同店は、タイヤに集中することにしましたが、その中でも、ある特定メーカーのタイヤに絞って販売することにしました。これにより、そのメーカーのタイヤを扱う卸売業者との関係を強化できました。

 結果として、同店は有効な品揃えや陳列に関するアドバイスをいただいたり、古くなったタイヤの在庫を無償で交換していただいたりと、効果的な品ぞろえを展開することができました。

(2)Price(価格)価格面での取組み

 同店は、近隣に立地する大手タイヤ量販店の販売価格に基づいた価格設定をしました。卸売業者の協力を得て、同店が扱うタイヤが大手量販店においていくらで販売されているのかを調査し、4本セットであれば大手量販店よりも安くなるような価格設定を行いました。

 この取組は、卸売業者との契約により、年間タイヤ仕入本数が一定量を超えた場合にリベートが発生する仕組みとしたことを踏まえています。

(3)Place(チャネル)面での取組み

 Placeは場所を指すことから、マーケティングの4Pでは「チャネル」に置き換えられます。この「チャネル」とは、英語の「channel」のことで、経路や道筋、ルートという意味です。

 同店は、チャネル面での取組みとして、仕入先となる卸売業者を慎重に選定しました。選定の基準は、タイヤに関する幅広い知識と提案力を持つこと、スピーディーかつ確実な納品体制を構築していること、でした。これらの基準に基づき、同店は複数の卸売業者を比較検討し、最適な業者を選定しました。

(4)Promotion(販売促進)面での取組み

 

同店は、販売促進面での取組みとして、顧客向けのハンドアウトチラシの作成をしました。このチラシの内容は、売れ筋の主要なタイヤサイズについて、交換工賃や消費税を含んだ1本価格と4本価格が分かるものとしました。

 また、顧客が給油中に、スタッフがタイヤの空気圧点検を行い、すり減ったタイヤを見つけたら、上記のチラシを使ってタイヤ販売を提案しました。

5.まとめ

 当記事では、ガソリンスタンドが油外商品を拡販するために、特定の油外商品に特化するべき理由を、選択と集中の観点から説明しました。選択と集中は、企業が競争優位性を築き、持続的な成長を達成するための有効な戦略と言えます。

 本記事で紹介した内容を参考に、自社の状況に合った油外商品販売戦略を策定していきましょう。

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