1.ガソリンスタンドの油外商品販売は、属人的販売から脱却しなければならない
ガソリンスタンドが、洗車やタイヤなどの油外商品をより販売していくためには属人的な販売から脱却し、組織的な販売を行う必要があります。属人的な販売とは、個人の販売技術やスキルに依存する販売を指し、組織的な販売とは、店舗全体の販売力向上を目指す販売を指します。
例えば、販売力の高い特定のスタッフに、多くの給料を支払い、多くのシフトに入ってもらうことで、店舗の業績を維持・拡大しようとすることは、属人的販売を狙っています。この場合、そのスタッフが店舗から抜けてしまうと、業績は大打撃を受けるリスクがあります。
これに対して、スタッフ全員が油外商品の説明ができるように、パンフレットを準備したり、説明の仕方を教育したりすることは、組織的販売を狙っています。この場合、あるスタッフが抜けても店舗全体の販売力は衰えにくく、業績低下のリスクは低いと言えます。また、全スタッフの販売力を活用できますので、成果は出やすいとも言えます。
そして、このような組織的販売をするには、条件が必要です。
2.「組織」とは?
組織的な販売をするには、まず、自店が組織になっている必要があります。アメリカ合衆国の電話会社の社長であり、著名な経営学者でもあったチェスター・バーナードは、組織の成立条件として以下を示しています。
- 共通目的:チームとして進むべき方向性のことです。
- 貢献意欲:スタッフ個人の努力を共通目的実現のために寄与していこうという意識のことです。
- コミュニケーション:貢献意欲を引き出すための意思疎通のことです。
今回の記事では、上記の組織の成立条件のうち「共通目的」について、詳しく解説していきます。
3.目的・目標・手段の違い
上述の「共通目的」とは、従業員が共通する目的を持っていることを指します。上述の「共通目的」とは、従業員が共通する目的を持っていることを指しますが、目的・目標・手段の定義は以下となり、混同に注意する必要があります。
- 目的:達成したい最終的な状態や理想。
- 目標:目的に近づくために設定する具体的な数値や期限。
- 手段:目標を達成するために行う具体的な行動や方法。
これらの違いを、帰省における例で説明します。
4.帰省における目的、目標、手段
私が現在住んでいる埼玉から実家のある青森まで自家用車で帰省するとします。埼玉から青森までの距離は約800kmあり、片道12時間ほどかかります。新幹線を使うこともできますが、自家用車で帰省すると、高速道路のサービスエリアでご当地グルメを楽しむことができます。
各地のサービスエリアには、その土地ならではの美味しい食べ物があります。群馬では「上州牛丼」、栃木では「宇都宮餃子」、福島では「いかにんじん」、宮城では「牛タン」、岩手では「わんこそば」、秋田では「きりたんぽ」といった具合です。
新幹線は移動時間が短くて便利ですが、グルメの選択肢は限られています。それに比べ、車ならば各地で様々なご当地グルメを楽しめます。
ただし道中は長いですから、出発前には車の整備をし、朝早く出発するために前日は早めに就寝することを心掛けます。また、当日は余裕を持った時間管理をして安全運転に努めます。
つまり、最終目的地の青森に安全に到着するには、群馬・栃木・福島・宮城・岩手・秋田という各目標地点に安全に到達する必要があります。そのためには、埼玉を出発する前に、車の整備、十分な睡眠をとり、当日は余裕を持った時間管理という手段をとります。これが、目的・目標・手段の関係性です。
バーナードは、組織の成立条件のひとつとして、共通目的を挙げました。つまり、自店が組織的な活動をするためには、店舗運営の目標や手段ではなく、目的を明確にして、共有することが必要だということです。
なお、以下では目標と手段の混同について述べていきます。
5.目標と手段の混同
あるガソリンスタンドで、店長は油外商品の販売を促進するべく、スタッフ全員に「1日100回、お客様へ声掛けを行うこと」と指示しました。
そして、当日のシフトを終え、退勤するスタッフに声掛け数を申告させ、声掛け数の目標達成者を賞賛し、未達成者を叱責していました。
ある日、スタッフAは退勤時に80回の声掛け数を報告。声掛けの目標100回に届かなかったことから、店長は叱責しました。一方、目標を20回も上回る120回の声掛け数を報告したスタッフBは店長から賞賛されました。
しかし、閉店後に個人別売上を確認してみると、80回の声掛けを行ったAの売上は50,000円だったのに対し、120回声掛けを行ったBの売上は3,000円という結果でした。この結果に気づいたAは、店長の対応に失望してしまいました。
「100回の声掛けをすること」は売上向上のための手段であり、それにより達成したい目標売上高があるはずです。さらにその先には、店舗として達成したい経営目的が存在するはずです。この事例は、手段と目標の混同することの危険性を示唆しています。
6.まとめ
組織的販売をするには、自店が組織になっている必要があります。そのためには、共通目的・貢献意欲・コミュニケーションが必要です。共通目的は、スタッフが共有するべき目的ですが、目標や手段と混同しないようにしましょう。さらには、目標と手段の混同にも注意していきましょう。
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