競合に顧客が流出した美容院
中身は同じでも、人によって呼び方が異なる業種に美容院・美容室があります。今回は、相談者様が「美容院」と表現していたので、その表現で通します。
都内23区内に立地し、経営者含め4名で運営するその美容院は、スタッフ全員が美容師免許を取得していますが、最近、近隣に多くの美容院が進出してきており、客数が減少してしまいました。そこで経営者は、スタッフにネイルの技術を習得させ、新メニューとして展開することを検討しているのですが、さらにメニューを増やして集客を図った方が良いのだろうか、という悩みを抱えていました。
自社、競合、顧客を分析する
戦略を検討する際に、有効な手法としてよく用いられるのが、3C分析という手法です。これは、自社(Company)、競合(Competitor)、顧客(Customer)の3つを分析し、戦略構築の材料を検討しましょう、という考え方です。
冒頭の美容院経営者の発言からは、自社に対する視点として、スタッフ全員が美容師免許を持っていること、競合に対する視点として、新規参入が相次いでいることが分かるものの、それらの分析は浅いものであるとともに、顧客の視点がありません。
顧客の分析をせずに、ネイルやその他メニューを新規導入したとしても、それに対する需要がなければ集客には寄与せず、業況はますます厳しくなることが予想されます。
そこで、3C分析の抜けていた視点を埋めるために顧客分析を行うとともに、現状の分析も深めていく必要があります。
自社(Company)の分析
事業者は日々「人」「物」「金」「情報」といった経営資源を活用して事業展開をしています。自社(Company)の分析は経営資源の分析とも言えます。経営者やスタッフという「人」の他に、店舗の立地や設備などの「物」、保有している現預金や金融機関との関係性などの「金」、発信したり収集したりしている「情報」それぞれが、現状では好ましいものとなっているのか、そうではないのかを検討します。
競合(Competitor)の分析
競合(Competitor)の分析では、どのようなマーケティング戦略をとっているのかを検討すると良いでしょう。その際の着眼点として、製品・サービス(Product)、価格(Price)、立地(Place) 、販売促進(Promotion)の4つをお勧めします。これらは頭文字がPなのでマーケティングの4Pと呼ばれます。
競合はどのような商品や美容サービスを提供しているのか。その価格はいくらで、高価格なのか低価格なのか、相場感がある価格なのか。立地の利便性や店舗の入りやすさはどうなのか。販売促進手法として何を行っているのか。このような点を検討します。
顧客(Customer)の分析
顧客(Customer)の分析では、店内で得られた情報、つまり、これまでいただいた顧客の声などからどのようなニーズがあるのかを把握するとともに、一般的な顧客動向も把握する必要があります。
例えば、総務省統計局のホームページに掲載のある家計調査年報では、2人以上の世帯における2017年の理美容サービス向け支出は36,137円としています。これを遡って調査することにより、顧客の理美容サービスの支出動向を把握することが可能となり、価格戦略に活かすことが可能となります。
さらに昨今は、外国人観光客の動向を把握することも必要です。ホットペッパービューティーアカデミーが中国・香港・韓国・台湾に住んでいる20~49歳の女性800名に実施した「訪日旅行中に体験してみたいこと」に関するアンケートによれば、「美容サロンへ行く」という回答が26.5%に達し、「お祭りやイベントの見物・参加(22.9%)」、「世界遺産・名所旧跡の観光(25.1%)」を上回りました。外国人観光客の間で、美容サービスへのニーズが高まっていることが伺えます。
3Cを踏まえて総合的に判断する
3C分析の結果、自社(Company)の強みを活かすことが出来て、競合(Competitor)と差別化ができて、顧客(Customer)の需要動向にマッチした取組みがネイルであれば、冒頭の経営者が言うようにネイルをメニューに追加してもよいでしょう。
しかし、単に思い付いたから、他店がやっているから、といった場当たり的な発想では、集客力は向上しないはずです。
人気のある美容院・美容室を経営するために集客力を高める1つの方法として、自社という内部環境と競合・顧客といった外部環境を把握し、総合的に判断することである、と言えるでしょう。
美容院・美容室、理容店に関する参考コラム
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