日勤と夜勤
私は、21年間で17店舗のガソリンスタンドを渡り歩いた中で、24時間営業の店舗運営も幾度か経験してきました。
24時間営業の場合、大体どこの店舗でも、勤務形態は、朝から夜まで勤務する早番、午後から深夜まで勤務する遅番、夜から朝まで勤務する夜勤、の3交代制でした。このうち、正社員は早番・遅番として日勤を担当し、夜勤は専属のスタッフ、例えば嘱託社員やアルバイトスタッフが勤務する形態をとっていました。
正社員が夜勤をしない理由①
正社員は、嘱託社員やアルバイトスタッフと比べると、油外商品の販売に長けた方が多いので、油外商品の需要がある時間帯に勤務させたいため、早番もしくは遅番という日勤を担当します。これに対して、深夜から朝までの時間帯は、油外商品に対する需要は極端に落ちるため、正社員ではなく、嘱託社員やアルバイトスタッフで店舗を回します。
参考までに、私が勤務していたガソリンスタンドの系列店で、深夜の時間帯で油外販売をしようと正社員を交代で夜勤に入れ、取組んだ店舗がありましたが、深夜の時間帯は油外商品の需要がないことがわかり、早々に夜勤は給油のみに切り替えた事例があります。
正社員が夜勤をしない理由②
労働基準法では、夜10:00から朝5:00までに勤務させた場合は、25%の割増賃金を支払うことを義務付けています。嘱託社員やアルバイトスタッフに比べると人件費が高額な正社員に夜勤をさせることは、人件費負担が重くなってしまいます。
そこで、ガソリンスタンドの夜勤は、正社員がシフトに入るのではなく、嘱託社員やアルバイトスタッフが担うケースが多いと言えます。
形式知と暗黙知
店長を含め正社員は日勤を担い、嘱託社員やアルバイトスタッフは夜勤を担う、という役割分担をした場合に、問題となってくるのが、正社員と夜勤スタッフの意識疎通です。
知識には、言葉や文章、図などで相手に伝えることのできる形式知と、伝えることが困難な暗黙知があります。形式知はマニュアルや掲示板、引き継ぎ書で日勤を担う正社員から夜勤スタッフへ伝えることが可能です。しかし、暗黙知は伝わりません。そこで、同じ時間に働くことで、暗黙知が伝わっていきます。
ですが、暗黙知を伝えるために、高い人件費をかけて正社員を夜勤に回すことは、日中の油外販売が疎かになってしまい、前述の割増賃金も考えると費用対効果は高いものにはなりにくいと言えます。
日勤を担当する早番の正社員が出社した朝に、夜勤スタッフは退社します。また、夜勤スタッフが出社した時に遅番の正社員が退社します。お互いが顔を合わせるのはこの時だけです。勤務時間が違うので、飲み会にも誘うことが困難です。このようにして、日勤組と夜勤組の断絶が始まっていきます。
日勤と夜勤のシフトを被らせる弊害
日勤が7:00~22:00、夜勤が22:00~7:00までとします。日勤と夜勤の断絶を防ぐために、日勤と夜勤のシフトを数時間被らせる、という考え方もあると思います。
この場合、日勤を夜勤に被せる、例えば日勤を24:00までにするという方策は、正社員の割増賃金が嵩む他、油外商品の需要が低い時間帯に働かせることで、費用対効果が好ましいものにならないはずです。
よって、夜勤スタッフを22:00前の時間帯か、7:00以降の時間帯に勤務させることにした場合、夜勤スタッフに割増賃金(深夜手当)は発生しません。また、日勤は油外販売がついて回りますが、普段、油外商品を販売しない夜勤スタッフが対応できず、夜勤スタッフは安い賃金で単に疲労が増しただけ、という事例があります。
意思疎通を図るには
ガソリンスタンドでは月1回ペースでミーティングを行うケースが多いわけですが、このミーティングは、内容はともかく、フォーマルなコミュニケーションの場と位置付けられます。このミーティングに夜勤スタッフを出席させている店舗は多くない印象があります。
夜勤スタッフ全員を出席させる必要はなく、夜勤のリーダー格1名だけを参加させれば良いはずです。フォーマルなコミュニケーションの場に呼ばれたという事実は、店長は夜勤スタッフも気にかけてくれていると認識させ、これだけでも、かなりの意思疎通は図ることができるはずです。
正社員が夜勤をせず、顔を合わせるのは出社時と退社時のみ、ミーティングに夜勤スタッフを招かない、ということであれば、日勤と夜勤の断絶は深まり、当然、意思疎通は図ることができません。
以上より、ガソリンスタンドの夜勤スタッフと店長が意思疎通を図る工夫のひとつとして、夜勤スタッフを店舗ミーティングに参加させることが挙げられるでしょう。
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