洗車会員制度を導入していて「儲からない」と嘆くガソリンスタンドは「洗車会員制度で顧客を囲い込んで、エンジンオイルやタイヤを販売する」という、論理にトビのある考え方をしていないか、検討する必要があるでしょう。
近年、様々な業界・業態でサブスクリプションサービスが実施されています。ここでいうサブスクリプションサービスとは定額制サービスのことを指し、月ぎめの場合、1か月分の料金を払えば、その期間中は、アパレルだと洋服やアクセサリーが使い放題になったり、飲食店だと食べ放題になったりするサービスです。ガソリンスタンドの洗車会員制度もこのサービスの一類型と言えるでしょう。
今回のコラムでは、この洗車会員制度で失敗する典型的なケースを検証しながら、どのようにすれば、ガソリンスタンドが洗車会員制度で業績を向上させることができるのかを見ていきます。
論理のトビ
洗車会員制度は、顧客の固定化という効果を狙うだけでなく、洗車のために来店された顧客に洗車以外の商品を販売することによる客単価の向上も狙っています。
そこで、洗車会員の月ぎめ料金は、スポット洗車2~3回分に留め、割安感を訴求します。半年会員や年会員だとさらに割安に設定します。
そして、元を取ろうとご来店いただいた洗車会員の顧客に、様々な油外商品を勧め、販売しようとします。これが、冒頭で述べた「洗車会員制度で顧客を囲い込んで、エンジンオイルやタイヤを販売する」という論理にトビがある考え方です。
「タバコを止めたら体重が増えた」という表現は「タバコを止めた」ことと「体重が増えた」ことに直接的な関係がありません。一般的に「タバコを止めた」ことによる直接的な結果は、「食欲が旺盛になり、食事量が増加したこと」であり、それが「体重が増えた」ことに繋がります。
つまり「タバコを止めたら体重が増えた」は正確な表現ではなく、「タバコを止めたら食欲が旺盛になり、食事量が増加したことで体重が増えた」が正確なものとなります。
同様に「洗車会員制度で顧客を囲い込むこと」と「エンジンオイルやタイヤを販売すること」に直接的な関係はありません。この2つの事象を結び付けるのは「顧客との関係性を構築すること」です。
つまり「洗車会員制度で顧客を囲い込み、関係性を構築することにより、エンジンオイルやタイヤを販売する」という考え方が正しいものとなります。
では、洗車会員制度による顧客の囲い込みが関係性構築にどう関連するのでしょうか。
接触頻度の増加がもたらすこと
何度も繰り返して相手と会うことによって、評価や好感度が高まっていくという効果をザイオンス効果と言います。世の中の夫婦の多くが職場結婚であることもこの効果だと言われています。
洗車会員になると、会員料金の元を取るべく、月に何度もそのガソリンスタンドに足を運ぶ可能性が高まります。当然、店舗スタッフとの接触頻度が高まります。それにより、ザイオンス効果が発揮され、評価や好感度が高まっていきます。
結果として、スタッフから油外商品を買いやすくなる、ということです。よって、洗車会員制度を導入しているガソリンスタンド、もしくは今後の導入を検討しているガソリンスタンドは、顧客に対して油外商品を売込む前に、顧客との関係性の構築を主眼とする必要があります。
そのためには、「キドニタチカケシ衣食住」を切り口にした雑談が有効でしょう。
キ:気候
ド:道楽(趣味・テレビ・映画・スポーツ)
ニ:ニュース
タ:旅
チ:知人
カ:家族
ケ:健康
シ:仕事
衣:ファッション
食:グルメ
住:家・住まい
その他にも、給油せずに洗車の利用だけでご来店された洗車会員も歓迎しているか、スポット洗車と品質面で変わらない洗車仕上げをしているか、などをチェックする必要があります。
ここまで、論理のトビをなくし、直接的な効果にフォーカスすることにより、業績が向上する可能性が高まることを見てきました。
儲からないガソリンスタンドにおける洗車会員制度の特徴は、論理のトビがある思考のもと、顧客との関係性を考慮していない、という点が挙げられると考えますが、いかがでしょうか。
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