「リーダーシップを発揮しろ!」関東地方で複数のガソリンスタンドを運営する企業の店長会議で、その経営者は毎回毎回、販売目標未達の店長達に檄を飛ばします。ですが、販売予算を達成する店長はいつも同じ顔ぶれでした。
この経営者は、販売目標を達成できる店長を増やすために、何ができるのかと悩んでいました。今回のコラムでは、部下である店長のリーダーシップを発揮させるために経営者がとるべき行動を見ていきます。
とるべき行動1:権限を与える
この経営者に「リーダーシップとは何ですか?」と問いかけたところ、明確な答えが出てきませんでした。
ハーバードビジネススクールの名誉教授であるジョン・P・コッター氏は、リーダーシップを「変革を推し進める機能」、マネジメントを「効率的・確実的に組織を運営する機能」と定義しています。
そして、リーダーシップは経営者に求められる機能であり、マネジメントは管理者に求められる機能としています。
よって、もし経営者が店長にリーダーシップを求めるなら、経営者並みの権限・責任を与える必要があります。個人的な見解を申し上げると、ガソリンスタンドの現場を預かる店長は、経営者並みの責任は与えられていますが、それに見合った権限は与えられていない印象があります。
とるべき行動2:具体的な行動を示す
リーダーシップに関しては、以前より多くの論者が研究を進めてきています。初期の研究は、リーダーのパーソナリティーに着目したものでしたが、統一的な結論を見出すことができませんでした。
そこで、リーダーの行動に着目した研究がなされ、数々の研究結果が見られるようになりました。その中で、1977年に発表されたハーシーとブランチャードによるリーダーシップの状況適合論は、リーダーが置かれた状況を以下の4つに分け、その状況に応じたリーダーのとるべき行動を示しました。
①職場・部下が未熟な状況
②職場・部下が成長してきた状況
③職場・部下が成熟してきた状況
④職場・部下が熟練の領域に達した状況
それぞれの状況で意識するべきことは、リーダーの支援的行動と指示的行動それぞれの量です。
①の状況では、部下に教育を行い、多くの指示を出して、部下の成長を促します(支援的行動:少ない、指示的行動:多い)。
②の状況では、部下に簡単な仕事を任せてフォローを行うとともに、多くの指示を出します(支援的行動:多い、指示的行動:多い)。
③の状況では、部下に仕事を任せてフォローを行いますが、指示は少なくしていきます(支援的行動:多い、指示的行動:少ない)。
④の状況では、部下の自主性を重んじ、フォローも指示も少なくしていきます(支援的行動:少ない、指示的行動:少ない)。
これらの概念図が下記となります。
このように、リーダーがとるべき行動を示すことにより、リーダーシップが発揮されることに繋がりやすくなります。
とるべき行動3:フォローをする
経営者は、店長に権限を与え、とるべき行動を示したらそれで終わり、とするのではなく、折に触れ、店長のリーダーとしての行動をフォローする必要があります。もちろん経営者は忙しいですから、フォローしきれないということであれば、経営者と店長の間に位置する中間管理職にそれを任せても良いでしょう。
ここで重要なことは、経営者と中間管理職の間で、経営者が店長に与えた権限、示した行動は具体的に何かという点について共通の認識を持っておく、ということです。また、職場・部下を未熟・成長・成熟・熟練の4つに切り分けることを示しましたが、切り分けの基準は店長の主観によるものですので、店長はどういう基準で切り分けたのかヒアリングすることも必要でしょう。
また、現場で働くスタッフは、未熟な方もいれば、熟練の方もいるわけで、店長はそれぞれの段階に応じた個別の接し方ができているかどうかもフォローの対象となります。
今回のコラムでは、店長にリーダーシップを発揮させるためにとるべき3つの行動として、1.権限を与える、2.具体的な行動を示す、3.フォローをする、を挙げました。ガソリンスタンドは店長次第とよく言われますが、その店長を活躍させることができるかどうかは、経営者次第です。今回のコラムを参考に店長のリーダーシップを強化していただければと思います。
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