「フルサービスのガソリンスタンドにご来店なさるお客様の多くは、洗車機が空いていると、さほど時間がかからずに、洗車作業が終わると思っている人が多いんです。ただ、その場で働いているスタッフが、給油しながら洗車作業もしなければいけないので時間に余裕をもって洗車に来てほしいですね。」
これは、あるガソリンスタンドで働く方の発言ですが、この方は洗車を受注しても嬉しくないんだろうな、と思いました。ガソリンスタンドは、ガソリンで収益が安定しない中、ガソリン以外の洗車やタイヤなどの油外商品を販売していく必要があることは、周知の事実です。
経営陣にはこのような危機意識がありますが、現場は油外販売を「余計な仕事」と捉えているのかもしれません。今回のコラムでは、ガソリンスタンドで働く従業員がどうしたら油外販売を「余計な仕事」と捉えずに、積極的に取り組むことができるのか、洗車を例に見ていきます。
油外販売をしたくなる視点1:能力開発
業務に満足感を感じている従業員は、従業員満足度が高く、積極的に業務を行うことが可能となります。そして、従業員満足度を向上させるポイントの1つとして、能力開発があります。
従業員は、能力開発を通じて専門性を得ると、それを活かそうとします。社員研修の直後にモチベーションが上がるケースが多いのは、これが背景になっています。洗車に関しても、顧客には知り得ない専門的な知識やスキルを与えることにより、積極的な業務姿勢が期待できます。
仮に、シャンプー洗車、ワックス洗車、コーティング洗車の3種類の洗車メニューがあった場合には、以下のような専門性を与えると良いでしょう。
・それぞれの洗車に要する作業時間の違い
・ワックス洗車のワックスは何日くらいもつのか
・コーティング洗車のコーティングは何日くらいもつのか
・その顧客の車にあった洗車メニューの選び方
・洗車機で洗っても車に傷が付かない理由
油外販売をしたくなる視点2:モチベーション
従業員満足を高めるポイントにはモチベーション向上の取組みも挙げられます。
「やる気を見せろ」とハッパを掛けてモチベーションが上がるのであれば苦労しないわけですが、モチベーションを上げようとするならば、その仕組みを把握しておくことが効果を上げる近道となります。
私がガソリンスタンドの現場で実践して効果的であったのが、ハーズバーグ氏が提唱した「動機付け=衛生理論」です。また、傾聴することもモチベーションの向上に繋がりますので、以下のコラムを参考にして下さい。
ベテラン社員のモチベーション
ガソリンスタンドで油外収益向上のために選択と集中を用いた事例
油外販売をしたくなる視点3:標準化
従業員満足を向上させるポイントには、業務の標準化も挙げられますが、セルフサービスのドライブスルー洗車ではなく、スタッフが実施する洗車で収益の向上を図るのであれば、洗車仕上げ作業の標準化は必須です。
そこで、作業マニュアルの作成と浸透が必要となります。作業中に給油客の対応をしなければいけないときに、他のスタッフが洗車作業を細かな打合せなしで円滑に引き継ぐことができると、作業スピードが向上し、仕上げの品質も安定します。以下のコラムを参考にして下さい。
人手不足のガソリンスタンドが洗車で儲けるオペレーションとは
今回のコラムでは、ガソリンスタンド従業員が油外販売をしたくなる視点として、1.能力開発、2.モチベーション、3.標準化、を挙げました。ガソリンスタンドの顧客満足は、顧客と従業員の関係性が鍵になります。そして、高い顧客満足を提供できる従業員は、高い従業員満足を得ているものです。今回挙げた従業員満足向上のポイントを意識して取り組んでいきましょう。
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