私の知人は、肩や背中のコリを解消するために定期的にマッサージ店に通っていたのですが、自宅そばにオープンした接骨院のオープニングキャンペーンで、5,000円分の施術を500円で提供するという新聞折込チラシを見たので、興味本位で行ってみました。
それまでマッサージ店に通っていた彼は、それ以来すっかりその接骨院が気に入ったと話していたのですが、数か月後にお会いした際にその接骨院には「二度と行かない」と私に打ち明けました。彼の話を受け、今回のコラムでは、行きつけの接骨院から固定客の心が離れていくプロセスを見ていきます。
お気に入りの接骨院
彼がその接骨院を気に入った理由の一つに、電気治療器があります。それまで通っていたマッサージ店では、そのような治療器がありませんでしたので、初めて電気治療器で施術を受けてその効果に驚いたようです。そこで、彼はプリペイドカードを購入して通うようになりました。
また、オープンして間もないということもあって顧客が少なく、行きたい時に予約なしで行ってもすぐに施術してくれたことも魅力のひとつでした。ですが、接骨院としては、いつまでも低空飛行を続けているわけにはいきません。
そこで、オープンして数か月後に再度キャンペーンを実施しました。その内容はオープニングキャンペーンと同じで、5,000円分の施術を500円で提供する、というものでしたが、これが当たりました。
予約がないと施術が困難な状況に
このキャンペーンで多くの地域住民を集客することができただけでなく、リピーターも数多く確保できたこの接骨院は、これを機に予約しないと施術を受けることが困難となりました。自分が通っている接骨院が賑わうことも悪い気がしなかった彼は、今度はLINEで予約を入れて施術に通うようになりました。
ただし、数か月通う中で気になったことがあると言います。それは接骨院が提供するマッサージは健康保険が使えないはずなのですが、毎回健康保険を適用させた会計をしていることです。支払負担額が軽くなるのは良いのですが、本当に大丈夫なのか彼は気になっていました。
そんな中、ある日、予約した時間にその接骨院に行った彼は、すべてのベッドが施術を受ける患者で埋まっている光景を目にします。予約を入れていた旨を伝えると、院長から30分以上待つこととなると言われました。
どうやら予約した時間にフリーの顧客が複数名来店してしまい、それを受け入れてしまった結果、満床となってしまったようです。予約は接骨院と彼との約束であり、それを破られたわけですが、その時点では、その接骨院を見限るつもりはなかったと言います。
接骨院側の事後対応
彼は、その後接骨院に「○月○日○曜日、○時から予約を入れていたのに、大丈夫じゃなかったですね」とLINEで連絡を入れたところ「すいませんでした」と院長から連絡が来ました。この謝罪の軽さが気になったと言います。
プリペイドカードの残高もまだ残っていたので、その後、また予約を入れて施術を受けに行ったところ、前回来院時は予約に応えることができなかったので、今回は無料でいいですと言われたとのこと。この時、前回なぜ予約に応えることができなかったのか、以降、どのような対策をとるつもりなのか、一切説明のなかったことが、見限るポイントとなったとのことです。
電気治療器は接骨院や整体院ならどこにでもあることを知った彼は、今や違う接骨院に健康保険を使わずに通っています。そもそも健康保険が適用されていることに疑問を抱いている中、入れた予約に応えてもらえず、簡単な謝罪と1回の施術料無料でことを済ませようとした接骨院側の姿勢に問題があるように感じます。
つまり、ある出来事1つをもって固定客は店舗を見限るわけではないということです。店舗が犯した小さな失敗が積もり積もる中、何かがトリガーとなって見限ることとなります。今回の事例では、説明がなかったことが見限りのトリガーとなりました。
重要なことは、失敗をしない店舗運営も大事ですが、失敗を今後に生かす店舗運営も大事だということです。なぜ失敗したのか、それを受け、今後どのように店舗運営を変えていくのかを説明することで失敗を今後に生かすことが可能になります。そのような真摯な姿勢を持つことが顧客の固定化に繋がることを改めて感じさせられた知人の話でした。
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