サブスクリプション(サブスク:定額制サービス)自体で利益を得ようとするのではなく、サブスクを用いて【顧客との関係性】を構築・維持することが、利益に繋がる可能性を高めます。
例えば、伝統的なガソリンスタンドのサブスクとして挙げられるのが洗車会員制度です。月に一定額を支払うと洗車し放題というものですが、この導入の背景には、時代的にガソリンさえ売れれば儲かるというものがありました。
ですが、ガソリンの利益が不安定になってくると、洗車会員制度自体では儲からないという理由から、洗車会員制度を実施する店舗が少なくなってしまいました。そして、多くのガソリンスタンドは、洗車を実施する都度、会計をする「スポット型」の料金体系にシフトしてきました。
結果として、顧客の洗車をする回数が減り、それは来店頻度減少に繋がり、店舗側は顧客との関係性構築・維持の機会を減少させました。これはサブスクの本来的な意義を見失った例ですが、今回のコラムでは、中古車店の事例を通じて、サブスクを使った儲かる仕組みについて見ていきます。
実用新案権を取得したのに…
先月から弊社がご支援している、その中古トラック販売店は、エンジンから出た排気ガスの通り道であるマフラーの洗浄システムで実用新案権を取得していました。このマフラーの中には「触媒」と呼ばれる排気ガスを浄化する装置がついていますが、長年使用していると、この「触媒」が汚れで詰まることがあります。
するとエンジンの警告ランプが点灯し、加速力の減少や燃費の悪化に繋がり、不経済な走行となってしまいますが、同社の洗浄システムはこれを解消することができます。せっかく実用新案権まで取得したので、大々的にこれを売り出したいと考えているのですが思うように売れていきません。そこで顧客属性を検討しました。
同店の顧客属性
このサービスが売れない理由はいくつか挙げられるのですが、大きな理由として「時間がかかること」が挙げられます。マフラーを外して分解し、時間をかけてクリーニングをするので1日に2台しか承ることができません。
同店はトラックをメインに扱っているため、仕事でそれを使う方が多く、顧客のほとんどが、マフラーの詰まりを示す警告ランプが点いてからクリーニングを依頼してきます。
そういう時に限ってトラックの仕事が忙しく、「明日までに仕上げてくれ」というご要望が多いのですが、これは同店のユーザーは【時間がタイト】な方が多いということを意味します。ただし、年がら年中【時間がタイト】かというとそうではありません。
では、【時間がタイト】ではない時にクリーニングに来るかと言えば、「警告ランプが点いてからでいいや」という考えがありますから、【時間がタイト】ではないからといって、クリーニングのためにご来店する方は多くはありません。そこで、サブスクを活用したビジネスモデルが成り立つという仮説が表れます。
サブスクの本質
例えば、一定額さえ支払えば、1年間はマフラーのクリーニングし放題というサブスクがあったとしたら、顧客は一定額を支払っている以上、元を取ろうとしますので、【時間がタイト】でない時期に、クリーニングを依頼するモチベーションが高まります。
ここで、サブスク自体で儲けようとすると間違った方向に行ってしまいます。事実、過去にこのサブスクを立ち上げようと検討した時期がありましたが、結果として同店はこれを立ち上げませんでした。
ですが、冒頭に示したように、サブスクで来店頻度を高めて店舗との関係性を構築することにより、車検や整備を発注しやすくなり、果ては車両の購入にも繋がりやすくなります。ガソリンスタンドの洗車会員制度も、来店頻度の向上による関係性の構築といった路線で継続していたら、他の商品の販売に繋がり、収益性が向上した可能性があります。
今回のコラムでは、サブスクの目的は、顧客との関係性構築による関連購買であることを述べました。このコラムが、自店ではどんなサブスクが可能なのか、検討してみるきっかけになったとしたら幸甚です。
メルマガ会員様募集中
メルマガ会員様には、リアル店舗の現場経験20年以上、コンサルティング歴10年以上【通算30年以上のノウハウ】を凝縮した【未公開のコラム】や、当サイトに掲載したコラムの【解説動画URL】を優先的に配信しています。
登録はこちらから
↓↓↓
電子書籍のご案内
1年で70人のアルバイトに辞められたガソリンスタンド店長が人材に全く困らなくなった理由:育成編~人材が育つ職場と人材に見放される職場の境界線~
2020年3月15日発行 定価1,055円