その健康機器販売店の経営者は、過去に遭遇した交通事故や、長時間に及ぶデスクワークによる同一姿勢の維持などが原因で頸椎を痛め、めまい、手足のしびれ、歩行困難などの症状が発生するようになってしまいました。
様々な病院に通っても症状が改善されない中、ある方から健康機器を紹介されました。当該機器には、エコー検査で体に当てて超音波を受診する役目を果たすプローブ(探触子)に該当するものが付属されており、これを身体の不調を感じる施術箇所に当て、振動を与えるものです。
これを使用してみたところ、症状が劇的に改善しました。この経験を踏まえ、当健康機器の素晴らしさを多くの方に知ってもらいたいと健康機器の販売を始めました。販売方法は、見込客に当健康機器を店内で試用し、その効果を体感していただいて販売するというものです。
そのような事業展開を行う中、より多くの見込み客の多様な部位の治療に対応するために、この試用に使う機械のバリエーションを増やしたいと考え、その費用を小規模事業者持続化補助金で調達することにし、応募のための計画書を作成することにしました。
そのご支援を弊社が行い、結果として採択されたわけですが、どのようにしてこの健康機器販売店が、採択レベルの計画書を作成したのかご紹介していきます。
今回のコラムでは、下図の提出書類一覧表の赤枠部分、「様式2-1経営計画書兼補助事業計画書①」<経営計画>「2.顧客ニーズと市場の動向」を見ていきます。
1.「顧客ニーズと市場の動向」記入の仕方
今回見ていく「2.顧客ニーズと市場の動向」には以下の見出しを設けました。
【顧客ニーズ】
【市場の動向】
・セルフケア健康機器の市場動向
・商圏人口の推移
・競合動向
以降でそれぞれを詳しく見ていきます。
(1)2つに切り分ける
当欄のタイトルは「顧客ニーズと市場の動向」なわけですが、「顧客ニーズ」と「市場の動向」を一緒に書こうとすると、非常にまとまりにくく、冗長になってしまい、結果として読み手に伝わりにくくなってしまいます。そこで、まずは「顧客ニーズ」と「市場の動向」という2つの見出しを設けました。
そして「顧客ニーズ」としては、どのような症状を同店の健康機器で解決したいのかという観点から列挙しました。
(2)業界動向を盛り込む
市場の動向は前述の通り、さらに3つに切り分けましたが、まずは、健康機器を取り扱うからこそ知っておきたい業界動向として「セルフケア健康機器の市場動向」を取り上げました。
インターネットで、セルフケア健康機器の市場規模がどのように推移しているのかを調べたところ、健康志向という意識の高まりを反映させて、拡大傾向であることが分かりましたのでその情報をグラフとともに記載しました。
(3)商圏動向を盛り込む
業界動向は当業界で商売する同店だからこそ知っておきたい内容ですが、その他に、当地で商売する同店だからこそ知っておきたい内容として、商圏人口の推移が挙げられます。
同店の商圏は2つの自治体にまたがっていますので、両自治体のホームページからここ3年間の人口動向を把握し、表形式で掲載しました。多くの自治体同様に人口は減少傾向にあるわけですが、このことから、老後の生活の面倒を子どもやその家族、近隣住民の厚意に頼ることは困難となりつつあることが分かります。
よって、自分自身で健康寿命を延ばす必要性があり、その手段としてセルフケア健康機器を活用する選択肢が存在することを述べ、健康機器の販売は有望市場であることを示しました。
(4)競合動向を盛り込む
当欄の次には「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」を記載することになりますが、強みは競合他社と比較して優れているからこそ「強み」と言えるわけですから、競合の動向を把握しておく必要があります。
同店の場合、近隣に健康機器を販売する店舗はありませんが、マッサージや整体を提供する店舗は存在しており、それらを競合と捉え、名称・営業時間・概要・特徴・料金を一覧表にしました。
このようにして、「2.顧客ニーズと市場の動向」を作成しましたが、次回のコラムでは「3.自社や自社の提供する商品・サービス」をどのように作成したのかを見ていきます。
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