前回のコラム経営革新計画の書き方4:マクロ環境分析では、外部環境にはマクロ環境とミクロ環境があること、マクロ環境分析では、政治面(Politics)・経済面(Economy)・社会・ライフスタイル面(Society)・技術面(Technology)から分析するPEST分析があることを紹介しました。なお、この経営革新計画の全体像は、以下となります。
1.会社概要
2.当社の内部環境
3.当社の外部環境
4.当社のビジョン
5.ビジョン達成の課題
6.新たな取組みの内容
7.販売計画
8.設備投資計画
9.雇用計画
10.事業推進体制
11.教育研修計画
12.売上・利益計画
13.返済計画
14.行動計画
このうち、今回のコラムでは、「3.当社の外部環境」のうち、市場動向・顧客動向・競合動向といったミクロ環境についてそれぞれを見ていきます。
市場動向
市場動向を分析する場合は、市場規模や成長性などに着目します。この際に役に立つ統計データとして挙げられるのが、総務省【家計調査年報】です。これは、日本国内の家計の支出を通じて市場動向を把握することができます。インターネットで公開されており、利用に費用がかかることもありません。
例えば、ガソリンスタンドを例にとると、1世帯(2人以上の世帯)あたりの年間ガソリン購入量は以下のように減少傾向となっています。
2014年 484.357ℓ
2015年 479.554ℓ
2016年 463.889ℓ
2017年 459.577ℓ
2018年 471.455ℓ
さらに、年間の自動車整備費については、以下のように増加傾向なっています。
2014年 20,055円
2015年 19,462円
2016年 20,339円
2017年 20,495円
2018年 22,656円
ガソリンスタンドはオイルやタイヤなどガソリン以外の商品(油外商品)を販売するために店頭で顧客にアプローチをします。ですが、年間の給油量が減っているということは、来店頻度が低下しているわけですから、店頭アプローチという顧客を説得できる機会が少なくなっていることになります。よって、メールやブログなど【店頭以外での情報発信】が必要であることが分かります。
顧客動向
顧客動向は、顧客ニーズを掴むことが必要ですが、顧客の分析も併せて実施する必要があります。その際の手法として直近購買日(Recency)、購入頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)を把握し分析するRFM分析があります。
つまり、【最近買ってくれた方】【しょっちゅう買ってくれる方】【たくさん買ってくれた方】は誰なのか一定の基準を設けて洗い出し、そのような上得意客のニーズを洗い出す手法です。
ガソリンスタンドでいうと上得意客は油外商品を購入していただける顧客ですから、そのような顧客の住所・氏名もしくは、ナンバープレート情報などの顧客データを保有しておき、インタビューや雑談、接客の中から、顧客ニーズを拾い上げていくこととなります。
競合動向
競合よりも優れていて、顧客に価値を提供できる能力を【差別的優位性】と言いますが、これを把握する、もしくは構築するには、競合の動向を把握する必要があります。ガソリンスタンドの場合、競合の店頭に表示しているガソリン価格を調査するケースが多いのですが、それは価格で後れをとりたくない、もしくは価格で差別的優位性を構築したいという意識の表れです。
結果として価格競争という消耗戦に陥っていきますが、油外商品の販売を促進させたいなら、競合で油外商品を買わないと競合の取組みは分からないはずです。よって、経営者は競合調査のための費用を予算化し、現場に競合の調査をさせるべきです。
この行為を「競合へのプレゼント」ととるか「自社成長の投資」ととるかは、【短期的視点】しかないのか【中長期的視点】もあるのかということに繋がります。
今回のコラムでは、外部環境のミクロ環境を分析する視点として市場・顧客・競合動向を取り上げました。次回は、経営ビジョンについて見ていきます。
メルマガ会員様募集中
メルマガ会員様には、リアル店舗の現場経験20年以上、コンサルティング歴10年以上【通算30年以上のノウハウ】を凝縮した【未公開のコラム】や、当サイトに掲載したコラムの【解説動画URL】を優先的に配信しています。
登録はこちらから
↓↓↓
電子書籍のご案内
1年で70人のアルバイトに辞められたガソリンスタンド店長が人材に全く困らなくなった理由:育成編~人材が育つ職場と人材に見放される職場の境界線~
2020年3月15日発行 定価1,055円