ガソリンスタンドで働くスタッフの行動変容を促す5つのステップ

人材育成

 「スタッフが売ってくれないんですよ」あるガソリンスタンドの店長A氏は、ほとほと困った表情で打ち明けました。ガソリンの利益が不安定である中、ガソリン以外の洗車やエンジンオイルなどの油外商品を販売していかなければ店舗の収益が確保できない状況で、店長が孤軍奮闘して販売しているとのこと。

 店長としては、店頭販売の他にも現金管理やシフト作成、翌月のキャンペーン準備など様々な仕事を抱えている中、自分が店頭にいなくても油外商品を売れるようにしたいのですが、なかなか難しいようです。

 今回のコラムでは、ガソリンスタンドにおいて、スタッフの行動を変容させていくには、どのような考え方で、どのような働きかけをすればよいのかを見ていきます。

AIDMAの法則とは

 AIDMA(アイドマ)の法則とは、顧客が購買に至るプロセスを以下の5つのステップで説明したものです。
 A:Attention(注意):ある商品に注意を向ける
 I:Interest(興味):その商品に興味を持つ
 D:Desire(欲求):その商品を欲しいと思う
 M:Memory(記憶):その商品と他の商品を比較する
 A:Action(購買行動):その商品を購買する

 例えば、スタッフが給油中に、その車両のタイヤの溝が減っていることに気付いたとします。この場合「タイヤ交換しないと車検が通りませんよ。当店だとこのタイヤは工賃込みで4本39,800円です。交換いかがですか」とまくし立ててもなかなか売れません。

 これをAIDMAの法則に則ってアプローチすると以下のステップを踏むことになります。

 ①A:Attention(注意)を喚起するために「タイヤの溝がずいぶん減っていますが、いつ頃交換しましたか?」と問いかけます。
 ②I:Interest(興味)を持っていただくために「このまま交換しないと車検は通らないことはご存じでしたか?」と問いかけます。
 ③D:Desire(欲求)をかき立てるために「こちらのタイヤだと工賃込みで4本39,800円でして、あそこにあるタイヤ量販店より安いんです」と説明します。
 ④M:Memory(記憶)に留めていただくために「こちらのタイヤ価格表をお渡ししますので、よろしければあそこのタイヤ量販店へ持っていって比較してみてください」とお知らせします。
 ⑤A:Action(購買行動)を促すために「交換作業は15分~20分程度、クレジットカードでのお支払いもできますが、交換いかがですか」と買いやすさをアピールします。

 このように顧客の購買心理を踏まえて、1ステップずつクリアしていくことにより、購買行動に繋げていきます。そして、顧客もスタッフも人間ですから、スタッフにもAIDMAの法則を適用させた働きかけが、行動変容を促す可能性を高めます。

スタッフの行動変容を促すステップ

 スタッフの販売に至る行動変容を促すことを目的に、AIDMAの法則を適用させた店長の働きかけの例として以下が挙げられます。

 ①A:Attention(注意)を喚起させるために「お客さんと関係性を深めるためにはどうしたらいいと思う?」と問いかけます。
 ②I:Interest(興味)を持っていただくために「関係性を深めるとタイヤが売りやすくなるよね」とメリットを伝えます。
 ③D:Desire(欲求)の段階では、行動を起こしたくなるように「まずは、お客さんの目を見て接客してみない?」と具体的かつ簡単な行動を提案します。
 ④M:Memory(記憶)の段階では、新たな行動は忘れやすいのでそうならないように「目を見ることを日々、忘れないように意識してごらん。私もフォローするから」と提案します。
 ⑤A:Action(行動)を促すために「あちらのお客さんに早速やってみようか」と後押しをします。

行動変容ステージモデル

 AIDMAは購買心理のステップですが、これをスタッフの行動変容に当てはめることができることを述べました。似た概念に行動変容ステージモデルがあります。

 これは、以下のステージを踏んで行動が変わっていくとするものです。
 ①無関心期:行動を変えようとは思っていない状態
 ②関心期:行動を変える必要は感じているが、行動していない
 ③準備期:行動を変えてみる
 ④実行期:行動を変えて、6ヶ月未満
 ⑤維持期:行動を変えて、6ヶ月以上継続している

 これを踏まえて行動変容を図ることも一考です。どちらにせよ、行動変容を図るには、段階を踏まえることが重要であるということです。

 今回のコラムでは、ガソリンスタンドで働くスタッフの行動変容を促す5つのステップとして、AIDMAの法則と行動変容ステージモデルを挙げました。

 AIDMAの法則にせよ、行動変容ステージモデルにせよ、相手がどのステップ、ステージにいるかを見極め、焦らずにその段階に応じた働きかけを行いますが、正確な見極めが必要なのではなく、個人の状態に応じた働きかけを意識して、日々スタッフと関わることが行動変容に繋がる可能性を高めます。

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