アルバイトさん主体の店舗が抱える問題点と人材教育の目的

人材育成

卒業とともに退職するアルバイトスタッフ

 ロードサイド店舗では、アルバイト(パートタイムで働く有期雇用の労働者)さん主体で店舗運営を行っているケースが多々見受けられます。そのような店舗の店長から以下のご質問をいただきました。
 「学生アルバイトさんの勤務期間は、長く続いても学校卒業までです。いずれ辞められてしまうのに、人材教育に力を入れても、労多くして功少なし、になるのではないのでしょうか?」

アルバイトさんに資格を取得させる理由

 このご質問に答えるため、あるガソリンスタンドの事例を紹介したいと思います。
 ガソリンスタンドは、乙種第4類危険物取扱者(乙4取扱者)という資格を保有するスタッフが最低1名以上、現場にいなければ営業できないこととなっています。多くの場合、正社員(フルタイムで働く無期雇用の労働者)がこの資格を保有し、アルバイトさんはこの資格を保有していないため、営業時間中は正社員が常に店舗にいることとなります。

 このガソリンスタンドではアルバイトさんに、この乙4取扱者の資格を取得させ、20:00以降の営業を任せるようにしました。これは、20:00以降はガソリンしか売れず、油外商品(ガソリン以外の商品)の販売が期待できず、客単価が低いため、閉店まで働く正社員の勤務時間を日中へシフトさせ、日中の販売力を強化させる狙いがありました。

 なお、アルバイトさんがこの資格を取得するために、店舗側が行ったことは、書店で販売している乙4取扱者の試験対策テキスト代と受験料、受験会場までの交通費の負担(合計数千円)だけで、勉強の仕方はアルバイトさん本人に任せました。
 また、資格試験に合格すると時給が上がり、閉店業務ができるようになるとさらに時給が上がる仕組みとしました。
【参考記事】多くの客数が見込めない店舗の客単価向上策

教育の連鎖

 この取り組みは、店舗の売上を向上させましたが、ある日、この乙4取扱者の資格を保有するアルバイトさんから、数か月後に退職したいという申し出がありました。すると、別のアルバイトさんから、この資格を取得して、20:00以降の運営や閉店業務を引き継ぎたいという申し出がありました。
 店舗側は、前述のように各種費用を負担し、そのアルバイトさんに勉強をしてもらった結果、めでたく合格できました。そのため、20:00以降の店舗運営は正社員が担うことなく、継続して日中の油外商品販売に勤しむことができました。

 そして、この後任アルバイトさんが退職することとなる前に、別のアルバイトさんが乙4取扱者の資格試験に合格するようになり、このガソリンスタンドの閉店業務は、ほぼ完全にアルバイトさんに任せることができるようになり、日中の油外販売が向上しました。

組織風土の醸成

 この事例は、「夜間に勤務するアルバイトさんは乙4取扱者の資格をとる」という組織風土が醸成された事例です。いずれ辞めてしまうからと、教育に力を入れないと、人材が育たない組織風土が醸成されてしまいます。逆に、辞められるまでは立派な戦力と見なして教育に力を入れ、資格も取らせ、権限も委譲すると、そのアルバイトさんが辞めても、醸成された組織風土が後任を育てます。

 よって、冒頭の店長からの質問に対する答えとしては、卒業とともに退職する学生のアルバイトさんに人材教育という「労」をかけることは、人材が育つ組織風土が醸成され、「労」以上の「功」が得られる可能性が高まる、となります。
 ちなみにこの店舗は、学生のアルバイトさんが卒業と同時にそのまま正社員となるケースも多くなったことを申し添えておきます。

 さて、貴店の組織風土は望ましいものとなっていますか?そして、良い組織風土を醸成するために何を行っていますか?

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