「実は、従業員から営業の自粛を求められました」
従業員数名の小規模な雑貨店の経営者からご相談をいただきました。新型コロナウイルスの影響で「マスク」「除菌グッズ」といった、現在品薄になっている商品を扱っている同店には連日顧客が押し寄せています。
従業員としては、不特定多数の顧客と日々接するわけで、自身が感染するのではないかという不安があり、経営者に営業自粛を求めたわけですが、今回のコラムでは、このような従業員の要請を受けた場合に、経営者はどのように意思決定をするべきか見ていきます。
苦境に耐え続けてきた結果
同店は、婦人服、食品、寝具、文具など、様々な商品を取り扱っており、長年の業歴で培った関係性を活かした仕入れにより、マスクや除菌グッズなどは、他店で品切れになっても同店では比較的品切れになる頻度が薄い状況を作り出しています。
それらの商品を求めにご来店された顧客は、ついで買いをしていくため、新型コロナの影響で同店の売上は好調を維持しています。
しかし、それまでの同店は、大型ショッピングセンターや全国チェーン店の進出、ネット通販の普及などにより、苦境に陥っていました。それを打開するべく、様々な手を打ってここまで凌いできたわけで、今回の新型コロナ騒動は、これまでの不振だった業績を挽回する絶好のチャンスとなっています。
それにも関わらず、従業員からは営業自粛の要請がありました。これに対して経営者は、営業を通常通り継続するべきと考えていますが、その根拠は以下の通りです。
その経営者が通常営業を継続するべきと考える理由
・雇用を守るには、給料を払わなければならず、売上が必要であるため。
・地域密着型かつ生活必需品を取り扱う店舗として地域住民の生活を守る必要があるため。
・周囲の店舗で休業しているのは、来店が激減している飲食店くらいであり、競合は営業しているため。
・競合は時間短縮で営業をしているが、その理由は、人件費を圧縮するためと対外的なアピールをするために過ぎないと思われるため。
このような理由から営業を通常通り継続するべきと判断していますが、どうもご自身の考えに自信が持てないようで、弊社にご相談してきたようです。
経営理念の策定と浸透
経営者が迷った時、判断の拠り所になるのが経営理念です。経営理念は、「自店は何のために存在しているのか」という問いに対する答え、つまり自店の存在意義を示します。よって、迷った時に判断の拠り所にならない経営理念は、見直さなければなりません。前述の店舗には経営理念がありますが、判断の拠り所になっていないことが伺えます。
また、経営理念は掲げるだけでは意味がなく、社内に浸透させる必要があります。経営者や管理職が自分の言葉で社内に経営理念を伝え続けなければいけません。それが社内で浸透していれば、経営者も従業員も判断の拠り所が共通しますので、一体感を持った店舗運営が可能となります。このことは、新型コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされている飲食店にも言えます。
なぜ休業しているのか
「焼き鳥で世の中を明るくする」
これは焼き鳥居酒屋を展開する株式会社鳥貴族の経営理念です。現在、鳥貴族の直営店は休業していますが、
「営業するより、休業したほうが、世の中を明るくすることができるから」
これが鳥貴族の休業の理由であれば、経営理念が拠り所になっており、有効に機能しています。
「お客様が来ないから」
「行政から自粛要請があったから」
「クラスターになったら大変だから」
これが休業の理由であれば、経営理念は機能していない可能性が高いと言えます。
昨今、多くの飲食店が休業していますが、「なぜ休業しているのですか」と問われた場合に何と答えるでしょうか。新型コロナウイルスの影響は良くも悪くもあらゆる業種に及んでいますが、自店を見直すきっかけと捉え、自店を磨き抜いた店舗こそ、終息後にその真価が見えてくるのではないでしょうか。
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