新型コロナの渦中で営業を継続する店舗の経営陣は、金銭面以外の報酬がスタッフの働きに見合っているか、今一度検討する必要があります。
ドラッグストア「スギ薬局」を展開するスギホールディングスが、全スタッフにボーナスを支給しました。これは新型コロナの影響を受け、マスクや除菌用品を求めにご来店される顧客が引きも切らないため、スタッフの負荷が高まっていることを受けたものです。
ですが、中小・零細規模の店舗では、全スタッフに金銭を支給することは厳しいかもしれません。そこで、今回のコラムでは、新型コロナの渦中で営業を継続する店舗の活性化策について、金銭面以外の点から見ていきます。
誘因と貢献
スタッフは組織から誘因を受け、その見返りとして貢献を行います。誘因は報酬、貢献は労働と言い換えることが可能です。この、組織からスタッフに与える誘因が、スタッフが組織に与える貢献と等しいか大きいと、つまり誘因≧貢献とそのスタッフ自身が判断すれば、組織への参加、つまり労働を続けることとなります。
スギホールディングスのボーナス支給は、新型コロナ禍でスタッフの貢献が大きくなったので、それに見合った金銭的な誘因を提供したということですが、スタッフにとっての誘因は金銭だけではありません。金銭以外の誘因としては、言葉や表情といった形のないものもあります。ここで私のちょっとした体験をご紹介します。
共感という誘因
私がガソリンスタンドの運営会社に勤務し、店長を務めていた頃の話です。当時、反抗的な男性のアルバイトスタッフがいました。ある日、たまたまシフトの都合で私とそのスタッフの2名のみで、夜遅くまで食事もせずに店を切り盛りせざるを得ない状況になりました。
お互いに、少しのやりにくさを感じながら、押し寄せる顧客に対して給油作業や販売作業をしていたのですが、店頭のラッシュが過ぎ、来客が途切れた時に、空腹感を覚えた私は何の気なく、そのスタッフに「腹減ったな」と語りかけたのです。彼もまた食事をとる時間もなく、忙しく働いていたからです。
この言葉を受けた彼の表情…それまでは、忙しさとやりにくさで厳しい顔だった彼の表情が、ほっこりと緩んだのを私は今でも覚えています。何気ない一言が共感を生んだわけですが、このようなリーダーの何でもない言葉が、スタッフにとっては大きな誘因となることがあります。
相手に興味を
共感という誘因を与えるには、相手の状況を把握しておく必要があります。当たり前ですが、前述のスタッフが満腹状態だったら、「腹減ったな」と私が語りかけても何の共感も湧きません。忙しい中、食事もとらず、夜遅くまで働いている状況を把握しているからこそ「腹減ったな」という言葉が共感を呼び、誘因になったということです。
よって経営陣は、新型コロナの渦中で働くスタッフに大きな関心を持ち、そのスタッフに応じた言葉掛けをすることで誘因を高めていく必要があります。これにより、貢献に見合ったもしくはそれ以上の誘因が発生し、組織は活性化する可能性が高まります。
新型コロナ禍の終息はいつになるか分からない状況の中、不特定多数の方が訪れる店舗を運営することは、感染リスクもあることから営業を自粛する店舗もあります。その判断は各事業者それぞれのものであって良いと思いますが、営業を継続するのであれば、今回取り上げた誘因を意識することで、この難局を経営者含めたスタッフ全員で乗り切っていただけたらと思います。
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