完全給油とはミスのない給油
夏の全国高校野球甲子園大会は今年で100年を迎え、各都道府県で代表校を決める予選が行われています。そんな中、石川県の星陵高校が1回線から決勝まで無失点で代表の座を勝ち取り、これを「完全優勝」と表現した報道機関がありました。
無失点が完全優勝であれば、ガソリンスタンドにおいて、全くミスのない給油を「完全給油」と呼んでも良いでしょう。
ガソリンスタンドは、文字通りガソリンが主力商品ですが、フルサービスの店舗は、ガソリンを車に入れる給油作業を店舗スタッフが行います。顧客が自分で給油するセルフサービスとは違いますから、店舗スタッフの給油作業はプロとして行わなければなりません。つまり、給油作業の品質はアマチュアと同じではならず、常に完全給油をすることが必要です。
給油の際のミスとしては、下記が挙げられます。
・ガソリン車に軽油を、もしくは、軽油車にガソリンを給油する。
・10リットルや20リットルなど顧客から数量を指定されたにもかかわらず、満タンにしてしまう。
・同様に1,000円分や2,000円分など顧客から金額を指定されたにもかかわらず、満タンにしてしまう。
・給油終了後に給油キャップを閉め忘れる。
このようなことを発生させている店舗スタッフはプロとは言えないですし、そのようなスタッフに給油をさせている店舗はプロを育てる意識の薄い店舗と言えるでしょう。
そして、これらのミスは、顧客からの失望を買い、その顧客は油外商品を買うことはないでしょう。かつて、私がある店舗に転勤で赴任して間もなく、顧客にタイヤ交換の必要性を説明したところ、数年前に給油のミスをされた経験があり、ガソリンは立地上、当店で入れているが、油外商品は専門店で買っている、と言われたことがあります。数年前のミスでも顧客の信頼は簡単には戻らない場合が多いのです。
給油のミスを防ぐための声出し
駅のホームでは駅員さんが、指を差し声を出して、安全を確認しています。同様に、フルサービスのガソリンスタンドでは、下記を確認し、完全給油を行うために、声出しをします。
・その車両が使用するべき燃料はガソリンなのか、軽油なのか
・給油前にPOSへ設定したのは、満タン給油設定なのか、数量指定設定なのか、金額指定設定なのか
・給油キャップは締めたのか、締めてないのか
例えば、ガソリン車に乗ってこられた顧客がレギュラーガソリンの満タン給油を依頼し、35リットルで満タンになった例を考えます。
まずスタッフは、受注したら満タン給油をPOSへ設定した上で、給油する際にガソリン車か軽油車かを給油口の裏蓋のシールもしくはキャップの匂いで確認した上で声を出します。
「ガソリン車確認OK」
次に、手に取った給油ノズルがレギュラーガソリンのノズルかどうかを確認した上で声を出します。
「レギュラー確認」
さらに、満タン給油をPOSに設定したかを確認した上で声を出します。
「満タンセット確認」
その上で、給油を開始することを告げます。
「給油開始します」
これに対して、周囲のスタッフは「ありがとうございます」と返します。
字面だけ並べると「ガソリン車確認OK」、「レギュラー確認、満タンセット確認、給油開始します」となります。
給油中は、窓を拭いたり、車内のゴミ片付けを申し出たり、チラシを配布したりといったサービスを行い、満タンになったら給油ノズルを車両から引上げます。その際に、ノズルを計量器に戻し、キャップを持ってから、給油数量を声出しします。
「レギュラー35リットル満タンです、ありがとうございます」
これに対して、周囲のスタッフは「ありがとうございます」と返します。
ポイントは、ノズルを車両から引上げ、キャップを持つまでは無言でなければいけない、ということです。キャップを持ってから声出しします。
給油ミスがない状態を当たり前にする
店長はこれまで数千、数万回と給油をしてきているので、給油ミスなどしないかもしれません。しかし、その数千、数万回の給油の中で、上記の声出しを行わなかった結果、給油ミスをしてきたはずです。入社して日が浅いアルバイトスタッフが、かつての店長と同じように声出し確認を行わなかったとしたら、待っているのは給油ミスです。
繰り返しになりますが、これらのミスは、顧客からの失望を買い、よほどの信頼関係がない限り、その顧客は油外商品を買うことは無くなるでしょう。ミスのないのが当たり前であるのなら、ミスを防ぐ確認の声出しも当たり前に実施する必要があるのです。
食事に異物混入が頻繁に起こるラーメン店で、ラーメンの他に餃子を勧められても、餃子はおろか、ラーメンすら食べたくなくなり、来店客は減っていくでしょう。
コーヒーを頼んだのに紅茶を間違って持ってくる喫茶店で、飲み物の他にデザートを勧められても、頼むことはあまりないと思います。
フルサービスのガソリンスタンドが油外を売るには、まず完全給油を確実に全員が行うことです。完全給油なくして、油外は売れないと考えるべきでしょう。
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