1.ガソリンスタンドでのクレームを予防するために
(1)ガソリンスタンドで発生する給油ミスとは
ガソリンスタンドの主力商品は、当然のことながらガソリンをはじめとした燃料油なわけですが、それらを給油する台数が多ければ多いほど、給油ミスが発生するリスクも高まります。反面、スタッフには給油作業の経験値も蓄積されていきますが、その豊富な経験が油断を生み、ミスを呼ぶこともあります。
ガソリンには、ハイオクガソリンとレギュラーガソリンがありますが、ベテランスタッフがハイオクの給油という注文に対して、レギュラーガソリンを給油してしまうケースもあります。その理由として、経験をもとに「この車はレギュラーガソリンの給油である」と判断してしまうことが挙げられます。
ハイオク仕様の車両にレギュラーを給油すると、燃費が悪くなったり、最高出力が出なくなったりしますが、ハイオクもレギュラーもガソリンですから、エンジンに深刻な影響を及ぼす可能性は高くないと考えられます。ただし、その後に適切な顧客対応をしないと、クレームに発展する可能性が高まってしまいます。
(2)顧客の怒りを増幅させてしまった事例
あるガソリンスタンドで、ハイオク仕様の車両で来店された顧客が「ハイオク満タン」と店舗スタッフに依頼しました。給油後の会計時に、いつもよりも金額が安いことに気付いたその顧客は「本当にハイオクを入れたのか」と聞いたところ、レギュラーを満タンにしてしまったことがわかりました。以下はその時のやり取りです。
顧客「なんでレギュラー入れたの?」
スタッフ「いえ、車は走りますから大丈夫ですよ」
顧客「車は走るんだろうけどさ、なんでレギュラー入れたの?」
スタッフ「いえ、車は走りますから大丈夫ですよ」
顧客「なんでレギュラー入れたのか、聞いてんだろ?責任者呼んで来い!」
このようなクレームに発展してしまったわけですが「なんでレギュラー入れたの?」と聞かれたスタッフが率直に謝罪していれば、話はこじれなかったのかもしれません。
人は尋ねたことに対して答えを得られないと不満を覚えます。予想されるその答えが明確であればあるほど、その答えを得られないと不満が高まります。なぜレギュラーを給油したのかという顧客の質問に答えず、その場を上手く丸め込もうとするスタッフの意図が透けて見えただけに、顧客の怒りは増幅してしまいました。これらを踏まえると、以下のような接客が望ましいと考えます。
顧客「なんでレギュラー入れたの?」
店員「申し訳ございません。うっかりしておりました。当方のミスですから、今回のレギュラー給油分は当店が負担させていただきます。店舗責任者からも常々、今回のような場合は、お客様から代金はいただいてはいけないと指導されております。本当に申し訳ございませんでした。」
(3)対応と反応の違いとは
本来、給油ミスはないに越したことはありません。ですが、人間が給油する以上、ミスが発生する可能性はゼロではありません。そこで、油種を間違えて給油してしまった場合にどうするか、想定しておくことも重要なのではないでしょうか。
発生してしまった結果に対する行動を「反応」といい、発生しそうな結果を予測して事前に手を打つ行動を「対応」といいます。給油ミスが起こって、さてどうしようかと右往左往するのは「反応」です。これに対して、どのようなミスが起きる可能性があり、その場合にどうするかという行動を決めておくのが「対応」です。
ガソリンスタンドで発生するクレームを予防するための対応とは「反応」と「対応」を明確に区別し、起こり得るミスを想定し、その場合、どのように顧客と対峙するべきかを店のルールとして決めておくことと考えますが、いかがでしょうか。
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