タピオカがブームになっています。私が住んでいる埼玉県川越市の商店街でも、行列のできている店が増えたと思ったら、そのほとんどはタピオカを扱う店舗でした。
バンドワゴン効果というものがあります。バンドワゴンとはパレードなどの先頭車を指し、バンドワゴンに乗るということは、勝ち馬や流行に乗ることを指します。タピオカ店に並ぶ行列を見て、自分も並ばなきゃ、と思ってしまうのはバンドワゴン効果が効いているということです。
ですが、ブームはいずれ終わります。5年前に原宿で勃発したアメリカのポップコーンを扱う企業が次々と上陸して起こったポップコーン戦争は最大で5時間待ちにもかかわらず、多くの方がポップコーンの購入に殺到しました。ですが、今や当時の戦争に参入した店舗で残っているのは僅か1店舗です。
これが意味するところは「突然巻き起こる現象」は長続きしないということです。販売促進策に関しても、魔法のようなアイデアを求める方が多いのですが、そんなものはないですし、あったとしても効果はたいしたことがないものです。
今回のコラムでは、私がガソリンスタンドの雇われ店長だった頃、魔法のようなアイデアとして店舗に取り入れたもののうまくいかなかった販促策を通じて、効果的な販促を検討してみます。
ガソリンスタンドでうまくいかなかった販売促進策1:プラスチック製の球
これは、直径1㎝もない球状のプラスチック製品で、頂点部に突起があり、底部に穴が開いています。この突起と穴を使って複数個をつなげることができます。それなりの個数を繋げると輪っかにすることができます。
これを給油量に応じて、例えば10ℓ給油で1個といった形で顧客に差し上げます。顧客はそれを貯め、輪っかにして車内のルームミラーや、運転席のレバー類にかけておいたりできます。そして、貯まった個数に応じて、実に様々な景品と交換できるというものです。
この仕組みは、顧客への還元率が非常に高く、数個から景品に交換でき、溜めた個数によっては家電製品とも交換ができました。ガソリンスタンドは、球の一定量が回収できるので、販促費用は押さえられるとされていましたし、スタンプカードのような平面ではなく立体物を集めていただくことから効果は高いとされていました。
ですが結局、購入費用もそこそこかかり、景品代の負担については、あまりにも重すぎて、早々に打ち切りとなりました。
ガソリンスタンドでうまくいかなかった販売促進策2:景品引き換え補助券
これは、一定量のガソリン・軽油を給油した顧客に、景品の引換補助券を差し上げる仕組みです。券はスクラッチになっており、コインで削ると点数が出ます。一定の点数を貯めると、月替わりで用意しているマグカップ、コップ、ドリンク用ボトルなどと交換できる、というものでした。
仕組みが単純なので顧客にウケるであろうということ、景品自体は業者が大量に一括で仕入れることにより、ガソリンスタンド側は費用負担が軽いということで、導入しましたが、スクラッチの券の費用負担がことのほか重く、やはり費用対効果の面で早々に打ち切りとなりました。
ガソリンスタンドでうまくいかなかった販売促進策3:ガソリン無料券
ガソリンが2ℓ無料で給油出来る券です。給油していただいた顧客に次回から使えますのでと言って渡すと、次回2リットルだけ給油するという顧客はおらず、この券を持参してスタッフに満タン給油を依頼します。
このように客単価が上がるだけでなく、再来店のモチベーションも高まることが予想されましたが、いかんせんガソリンの利益は不安定ですので、たいした利益も上がることなく打ち切りとなりました。
このように、突発的に湧いたようなアイデアを販促策に応用しても、さほど効果はなく、効果がないから長続きしないこととなります。
これに対して、販促策としてのポイントカード、スタンプカード、ダイレクトメール、POP、のぼり、看板といったいわゆるベタなものは、廃れず長期間続いています。ということは、効果もそれなりにあるということでしょう。
今回のコラムでは、ガソリンスタンドでうまくいかなかった販売促進策の中で、個人的に印象深いものとして、1.プラスチック製の球、2.景品引き換え補助券、3.ガソリン無料券を挙げました。奇をてらわずに王道を極めていくことは、忍耐が求められます。ですが、それが店舗の骨となり血となります。販売に奇策はないことを踏まえて取組みたいものです。
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