1.在庫切れによる機会損失を防ぐための方法
(1)なぜ在庫を切らしてはいけないのか理解を共有する
ガソリンスタンドは、ガソリンや軽油といった車両用燃料の販売が主たる事業となります。車両用燃料だけでは思うように儲からないので、オイルや洗車といった油外商品を販売していますが、それも車両用燃料を販売している前提があってこそ、販売できるはずです。
ラーメン店がラーメンの他にビールを販売するのも主力商品のラーメンがあるからこそであり、ビールだけを楽しみたい顧客は、ビアホールや居酒屋に行くでしょう。同じく、スーツ店がスーツの他にビジネス用の靴を販売するのも、主力商品のスーツがあるからこそであり、靴だけを欲しい顧客は、靴店に行くでしょう。
つまり、主力商品があってこそ、付随する商品が販売でき、客単価が高まる、ということです。それは、主力商品の在庫切れは、店舗運営にとって致命的である、と言い換えることができるでしょう。まずは、職場の全スタッフがこのことを共有する必要があります。
(2)担当者1名に任せきりにしない
私は、ガソリンスタンドに21年間勤務した中で、店長時代に燃料油の在庫切れを2回経験しました。最初に経験した在庫切れは、発注担当者が発注を忘れていた、という人為的なミスに起因します。
発注担当者が忙しさのあまり、発注を失念したことが分かったその日、このペースで売れ続けていくと夜には在庫切れが避けられなくなりました。この時、私は店長として発注担当者を厳しく叱責しました。ですが、そのことを当時の上司に報告した時に、私の上司は静かに言いました。
「発注担当者の上司として、君はどんな在庫切れ対策をしていたのですか」
主力商品の発注作業をたった1名に任せ切りにしていたということは、相当なリスクを抱えていたことに気付かされました。
パナソニック株式会社の創業者であり、経営の神様と呼ばれた松下幸之助氏は「ダム式経営」という考えを提唱していました。ダムとは水を貯める池を指しますが、「ダム式経営」とは、企業は経営資源である「人・物・金」のダムを作り、リスクに備えることが重要という考え方です。
このような考え方に基づくと、主力商品の発注という重要な枠割は、1人に任せきりにせず、リスクに備えなければならない、ということになります。
(3)多頻度配送の交渉をする
2回目に経験した在庫切れは、需要がうまく読めずに、予想以上に顧客が来店して在庫切れを起こした、というものです。
当時、本社の方針で燃料油の安値販売を行っていた当店は、その価格設定に対する反響が非常に大きく、給油客が殺到し、毎日がてんてこ舞いでした。発注担当者は、さかんに「需要が読み切れない」とボヤいており、結果として在庫切れを起こしてしまいました。
ガソリンスタンドが燃料油を発注すると、卸売会社が受注し、タンクローリーを手配します。当時の配送頻度は、多くて1日2便でした。しかし今思うに、これを1日3便にしていたらこの在庫切れは防ぐことができました。
需要が大きく盛り上がった時点で、店舗責任者としては、本社もしくは卸売会社に便数増加の交渉をしなかったことは、いまだに心残りな部分ではあります。
売上と在庫に基づく自動発注システムを取り入れているガソリンスタンドも多いと思います。ですが、顧客動向をはじめとする外部環境が日々変わる中、自動発注に現場の視点を加えた発注を行うことは、より精密な在庫管理を実現することが可能となるでしょう。
ガソリンスタンドが発注ミスによるガソリンの在庫切れを防ぐための方策として(1)なぜ在庫を切らしてはいけないのか理解を共有する、(2)担当者1名に任せきりにしない、(3)多頻度配送の交渉をする、を挙げました。在庫切れは頻繁に起こることではありませんが、起こったとしたら影響は大きいことを認識して取り組んでいきたいものです。
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