従業員満足度を高めるためには、従業員満足度を下げないようにすることが前提です。従業員満足度の向上を目的とした施策を実施してそれを向上させたとしても、向上した分以上に従業員満足度が下がったら、施策を実施した意味がありません。
今回のコラムでは、いかに従業員満足度を下げないか、という観点から従業員満足度の向上策を見ていきます。
昼食の悲劇
業界誌「月刊ガソリン・スタンド」4月号に従業員満足度をテーマにしたコラムを執筆しました。なお、この業界誌には「4コマ漫画“SSあるある劇場”」というコーナーがあります。
ちなみに、「SS」とは「サービスステーション」の略で、ガソリンスタンド業界では、ガソリンスタンドはサービスが重要という意識を背景に、ガソリンスタンドを「SS」と呼びます。
さて、私にとっての「SSあるある」は昼食に関することです。自店の人材が不足している中、朝から狛犬のように駆け回って働く店長。ようやく店内が落ち着いてきたので、アルバイトスタッフから順番に昼食を摂らせていきます。
自分の部下全員が昼食を摂り、やっと昼食にありつける。時間もだいぶ遅くなっており、お腹はペコペコです。
ま、そういうことも想定していたので、今日は弁当の他にカップラーメンも準備してきた。「じゃ、お昼入るね」と店頭のスタッフに声を掛けて、休憩室へ。カップラーメンにお湯を注ぎ…と、ここで悲劇が起こります。
塵も積もれば山となる
「コンコン」休憩室がノックされ、店長は嫌な予感を覚えます。
入室してきたのは店頭で働いているアルバイトスタッフの1人。テーブルの上にあるお湯が注がれたカップラーメンに目を落とし、申し訳なさそうに「あの、お客さんにオイル交換してくれって言われたんですけど…」
今日のシフトでは、オイル交換ができるスタッフは店長の自分だけ。カップラーメンにお湯を注いだばかりなのに、オイル交換のために店頭に出なければいけない。作業を終えて戻ってきたらオレのカップラーメンはどうなっているのか…。
どんなに急いでもオイル交換は、ピットへの車の移動、作業、会計などを3分以内に終えることは困難です。よって、当然のことながら、オイル交換を終えてカップラーメンの前に戻ると、汁はほとんど無いくらいに麺がのびています。これを店長はすすることとなるのです。
この場合の被害者は、店長だけではありません。オイル交換が入ったことを告げに来たアルバイトスタッフも被害者です。やっとの思いで昼食の時間を迎えた店長に申し訳ない、という罪悪感を持たなければならないからです。
人材が揃っていれば、このようなこともないのでしょうが、揃うまでの間は、店長は昼食にカップラーメンを食べることができない日々が続きます。そんなことが積み重なっていき、店長は仕事への不満足感を積み重ねていきます。
ガソリンスタンドを運営する企業の経営者は、雇用している店長に実績を求め、そんなことは意に介さないかもしれません。ですが、塵も積もれば山となり、店長は退職という2文字が視野に入ってきます。店長が退職したら、貴重な戦力を失い、実績にも影響を及ぼすでしょう。
このような小さな従業員「不」満足を解消するにはどのような施策があるのでしょうか。
塵が何なのかを把握する
まずは、本社主導でアルバイトスタッフ含む全従業員から「SSあるある」のネタを出してもらいます。アンケートをとっても良いですし、店長がスタッフからの声を取りまとめて店長会議で発表しても良いでしょう。
重要なのは、この「あるあるネタ」を共有し、「そうだよねー」と共感させることです。
前述のカップラーメン以外の私が思う「あるあるネタ」として、例えば、
・軽自動車に軽油を給油する
・主婦パートのスタッフは10:00~16:00勤務、土日休みを希望する
・男性店長と女性アルバイトスタッフが結婚する
・閉店時刻間際にSSから店長の自宅に電話がある場合、そのほとんどがトラブルかクレーム
などがあるでしょう。その中で、従業員「不」満足に繋がりそうな「あるあるネタ」への対応を検討します。
カップラーメンにお湯を注いだ直後に作業が入り、カップラーメンがのびてしまったということであれば、その旨を現場から本社に申請させ、カップラーメン1杯分の金額を給与に上乗せします。これは、呼ばれた店長が書面で申請しますが、店長を呼びに行ったアルバイトの署名も必要とする仕組みにしていけば、不正申請は減少するでしょう。
もっとも、この仕組みをどれだけの店長やスタッフが使うかは分かりません。ですが、会社がそこまで従業員のことを気にかけている、という点がポイントと考えます。
このようにして、本社が現場に興味を持ち、ガソリンスタンドで働くスタッフの従業員「不」満足の低下を防止するための具体的な施策を打ち出すことにより、定着率も向上することが期待でき、それが業績の向上に結び付くと考えますが、いかがでしょうか。
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