慣習を大事にするべきか、改革を進めるか。意思決定を行う際に顧客の視点を重視することが生き残るガソリンスタンドにとって必要と考えます。
飲食店のやよい軒が、これまで無料だったご飯のおかわりを有料にする実験を開始することとし、この取組みについてTwitter上では賛否両論となっています。
今回のコラムでは、今後の取組みの方向性を模索するやよい軒の事例から、生き残るガソリンスタンド像を考えてみたいと思います。
無料サービスの有料化
やよい軒を運営する株式会社プレナス広報室では「以前より、おかわりをしている人もしていない人も同じ値段を頂戴しておりましたが、その不公平感にご意見をいただいておりました。今回のテストは、改めて定食の価格とおかわり自由の価格を設定し、お客様の評価を把握する一環でテストを行います」と発表しました。
このように今回の実験は、あくまでも顧客の声を受け止めたものであることを訴求しています。
長年、ガソリンスタンドの現場で働いて来た身としては、このような無料サービスの有料化について印象深いのが、タイヤ空気圧点検の有料化です。
店舗スタッフが給油から窓ふきまですべてやってくれるフルサービス型のガソリンスタンドが、顧客自身が給油を行うセルフサービス型に転換するに伴い、スタッフによる空気圧点検を有料化したケースがあちこちで発生した時期がありました。
これは、顧客の視点を意識していない点で、やよい軒の取組みとは根本的に異なります。そこにあるのは、省人化を通じたコスト削減により生き残りを図ろうという考え方です。空気圧点検を有料にして、点検を申し出る顧客を少なくして、少ないスタッフ数でも店舗が回るようにしよう、とも受け取れます。
このような顧客の視点を意識しないガソリンスタンドの取組みは、枚挙にいとまがありません。
「雨保証」が根付かなかった理由
ガソリンスタンドのスタッフが顧客に「洗車いかがですか」と声を掛けた場合に「雨が降りそうだから」という断り文句を封じようとして、考案された制度が「雨保証」です。
これは、当店で洗車をして24時間以内に雨が降ったら、次回の洗車を無料にする、という取組みであり、一部のガソリンスタンドで実施されたものの、業界全体に普及することなく消え去ったサービスです。
消え去った理由として、どうなったら雨が降ったこととするのか、という雨降りの定義が曖昧だったことや、当店で洗車後に数百キロメートル離れた地域へ移動し、雨に降られた場合にどうするのか、という対応地域の定義が曖昧だったことが挙げられます。
ですが、この取組みがヒットしなかった最大の理由は、売り手の「売りたい」という思いだけを重視したからではないでしょうか。「雨保証」は、天候が悪くても洗車収益を得るための手段であり、そこに顧客ニーズを満たそうという思いがあったのでしょうか。
生き残るガソリンスタンドとは
顧客の役に立ってこそ、企業は利益を得ることが出来るはずです。そのためには、顧客の視点で、顧客の役に立つのか、という立場から取組みの意思決定をすることが重要です。
やよい軒のように、顧客の声を踏まえても、実験段階で賛否両論となるような中、顧客の視点を重視せず、売り手の視点を重視した取組みは、儚く消えてしまうのは自明の理と言えるのではないでしょうか。
ガソリンスタンドがやよい軒のおかわり有料化を参考にすべき理由は、取り巻く環境の厳しさが増す中で、顧客の声を重視する姿勢が自社に根付いているか、再考する機会として活用できるため、と言えるのではないでしょうか。そして、そのようなガソリンスタンドが厳しい環境の中、生き残っていくのではないでしょうか。
顧客の声に関する参考コラム
■顧客満足度をアンケートで測定する前に検討するべきこと
■油外商品の洗車に注力して人気のガソリンスタンドになるコツとは
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