人手不足のガソリンスタンドが洗車で儲けるオペレーションとは

戦略の考え方

1.有効な洗車オペレーションとは

フィールド内に放置された車両

 そのガソリンスタンドは、人手不足に苦しみながら、少ない人数で業務をこなしていました。そのような状況の中、洗車の受注をすることもありますが、この場合、洗車を依頼した顧客は待合室に移動し、車両は無人状態になります。
 
 そんな中、新たに車両が来店し、洗車を受注したスタッフが他のスタッフへの引き継ぎもなく、その車両の給油作業に回ってしまうと、洗車するべき車両は放置されてしまい、なかなか洗車作業に取りかかることができません。結果として、洗車を終了させ、顧客に引き渡すまでの時間が長引き、顧客不満足を引き起こしてしまうという問題を抱えていました。

受注情報を共有する

 そこで、あるスタッフが洗車を受注した時に当該車両のワイパーに窓拭き用タオルを挟むことを提案しました。

 シャンプー洗車なら運転席側、ワックス洗車なら助手席側のワイパーにタオルを挟み、受注したスタッフが他の作業に回ってしまっても、手が空いた他のスタッフがその車両の洗車内容を把握し、洗車作業ができるようにする、という目的です。これをしばらく続けたところ、想像以上にスムーズな洗車作業を行うことができるようになりました。

 このことを知った店長は、「洗車受注シート」を作成しました。これは、A4用紙4分の1の大きさで、以下の項目が予め印刷されています。

 ・シャンプー洗車
 ・ワックス洗車
 ・コーティング洗車
 ・車内清掃
 ・受注担当者欄

 これを店頭に常備し、洗車を受注したスタッフは、受注内容に応じて○を付けるとともに、受注担当者欄に自身の名前を記入し、ワイパーに挟んでおきます。これにより、ワイパーにタオルを挟むよりも、作業内容が明確になり、さらにスムーズな洗車作業を実現することができました。

作業進捗情報を共有する

 これにより、受注から洗車開始までの業務が抱える問題は、ほぼクリアできました。しかし、洗車を終えた車両を洗車機から移動させて、水滴の拭き取りなどをする洗車仕上げ作業にも問題を抱えていました。

 洗車仕上げ作業をしている最中に、新たに車両が来店し、仕上げ作業中のスタッフが新規来店客の給油作業に回ってしまうと、車両が放置された状態になります。手が空いた他のスタッフが、洗車仕上げ作業に取りかかろうにも、どこから手をつけて良いのか分からず、結局2度手間作業をしたり、仕上げがきちんとできていなかったりしたままの状態で車両を顧客に引き渡してしまうのです。

 そこで、同店では、洗車作業の手順を決めました。窓を拭くタオルは青、ボディを拭くタオルはピンクとし、窓を拭いてからボディ、ボディから車内のメーター周りを拭き、最後にタイヤワックスを塗ることにしました。また、窓を拭く順番、ボディを拭く順番も決め、仕上げ作業中に車両から離れる場合は、離れる時に拭いていたところにタオルを置いた状態で、車両を離れるというルールを定めました。

 これにより、手が空いたスタッフはどこから仕上げ作業を行うべきかが分かるため、当該作業もスムーズに行うことができるようになり、洗車の受注から仕上げ作業を経て顧客への車両引き渡しまでの一連の流れが正確かつ短時間でできるようになりました。

 この事例のポイントは、作業を属人的なものでなく、組織的なものにしたことです。そのために情報が共有できる仕組みを作り上げました。人手不足のガソリンスタンドが洗車で儲けるオペレーションとは、情報共有にもとづく、組織的な取り組みだと言えるでしょう。

2.組織的取り組みに関する参考記事

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