生き残りをかけたガソリンスタンド運営会社の多角化の方向性

戦略の考え方

1.生き残りをかけたガソリンスタンド運営会社の多角化の方向性

(1)大阪にあるガソリンスタンド風居酒屋

 仕事で埼玉から大阪に来ています。私はガソリンスタンド出身という経歴からロードサイド店舗の販促支援をしていますが、大阪にガソリンスタンドのような居酒屋がある、という情報を得ました。そこで、宿泊先のホテルからさほど遠くないということもあり、昨日、仕事の懇親会を終えた後、お邪魔してきました。

 下の写真が店舗の外観ですが、店頭看板の価格表示がガソリンスタンドっぽさを強調しています。

 ガソリンスタンドに掲示されている「給油中エンジン停止」の表示を見ながら店内に入ると、ざっと店内には50人は入れると思いましたが、平日夜にもかかわらず3分の2ほど埋まっていました。

 メニューは、レギュラー、ハイオク、軽油の他にスーパーハイオクや重油もあります。これらの他にも、飲み物の種類は豊富です。

 レギュラー、ハイオク、軽油は写真の計量機から給油されます。私は、軽油(チューハイ)を「給油」することにしました。基本的にフルサービスですが、やり方を教えてもらってセルフサービスで「給油」することも可能なのだそうです。

 では、「給油」開始です。

 酎ハイを「給油」中なので、フレーバーを混入しながら給油します。

 満タンになりました。

 2軒目ということもあり、あまり多くの飲食はできなかったのですが、チューハイ3杯、カルビの乾きもの、ハーフサイズのピザを食して1,950円とリーズナブルな価格設定でした。

(2)繁盛の秘訣

 このような遊び心満載の店舗ですが、聞くと7年前にオープンし、現在は、複数店舗展開しているとのことで、ガソリンスタンドを模したという話題性だけではそのような繁盛店になれないと思いました。

 話題性の他に、この店舗の魅力として挙げられるのは、多くの方がオーダーするピザの高いクオリティです。私は今回、ハーフサイズを食しましたが、十分にボリュームのあるものであり、通常サイズだと食べきれない方も結構いるようです。そして、このピザの味は、専門店にも引けを取らないかなり高いレベルだと感じました。ランチタイムでも好評のメニューだそうです。

(3)多角化の方向性

 ガソリンスタンドの運営会社が、事業継続のための新たな一手を検討する際に、このような居酒屋との提携が考えられます。ガソリンスタンドではこの居酒屋の割引券を配布し、居酒屋ではそのガソリンスタンドの割引券を配布する。また両店で使えるスタンプカードがあってもよいでしょう。

 さらには、多角化の一端として、ガソリンスタンド運営会社が、このような形態の店舗を出店する、というのもありかもしれません。廃タイヤを積み重ねたテーブルを設置したり、各種油外商品のマメ知識などを掲示したりすると、ガソリンスタンドとの相乗効果を得ることができる可能性もあります。

 また、油外商品をメニュー化することも一考です。ウインドウォッシャー液なら青色のカクテル、エンジンオイルならスープ系、タイヤならイカリングやドーナツ、バッテリーなら豆腐や豚の角煮、といったものです。

 ただし、あくまでも飲食店ですから、今回の堺筋本町給油所がピザをウリにしているように、飲食店としての本質的なウリがなければ店舗運営は継続できないでしょう。今回の堺筋本町給油所は、ガソリンスタンド風という話題性で集客し、ピザで固定化を図る戦略と見受けられました。

 逆境の中で、生き残りをかけたガソリンスタンド運営会社の多角化の方向性として、この居酒屋は大きなヒントを与えてくれているのかもしれません。

2.ガソリンスタンドの生き残りに関する参考コラム

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