スタッフの能力開発には3つの手法があります。
①仕事をしながら能力開発を図る「オン・ザ・ジョブトレーニング」、略してOJT
②仕事から離れ、座学やワークなどで能力開発を図る「オフ・ザ・ジョブトレーニング」、略してOff-JT
③スタッフが自発的に能力開発を行う「自己啓発」
これらのうち、圧倒的に使用されているのが①のOJTなのですが、あまり機能していないという調査結果があります。
なぜ、OJTが機能しないのでしょうか。現場の責任者である店長がOJTのトレーナーを務めることがその原因のひとつかもしれません。
例えば、ガソリンスタンドでいえば、店長がトレーナーとして、新人スタッフにユニフォームの着こなし・店舗ルールの他、給油作業・窓ふき・精算業務・洗車仕上げといった基本的な作業をOJTで教えていきます。
ところが、店長は現場で責任が一番重いだけに、非常に多忙です。お客様から店長あてに電話がかかってきたり、エンジンオイルやタイヤ交換など新人スタッフではできない作業の依頼があったり、お客様からの質問に答えることができない他のスタッフが「お客様に訊かれたんですけど。。。」と質問に来たり等々。
つまり、店長がトレーナー役を務めるということは、多忙な店長がさらに多忙になることを意味します。店長は、新人スタッフにOJTを行っている最中に、他のスタッフやお客様に呼ばれ、新人スタッフは放置される「OJTという名のほったらかし」が起こります。
OJTは現場で行われるわけですから、放置されたスタッフは現場で店長が指導に戻ってきてくれるのを不安げに待つしかありません。これが、お客様からすると店内でボーっと立っているスタッフにしか見えないわけです。店内が混雑していて、忙しく立ち働くスタッフに何かを頼みたくても頼めないお客様にとって、その「ボーっと立っているスタッフ」は恰好のターゲットになるわけです。
「ねぇねぇ、早くガソリン入れ終えてくれないかな」
「洗車をお願いしたいんだけど、どんなメニューがあるのかな?」
「すいません、エンジンオイルの点検してください」
こんなことを言われても、つい数時間前に、この店舗で初めてユニフォームを着たばかりですから、何も分かりません。そこで、先輩スタッフや店長を探してお客様の言葉を伝えようとするのですが、いかんせん、どのスタッフも忙しく立ち働いているわけで、訊くに訊けないわけです。
結果として、新人スタッフはオロオロするだけ、タイミングが悪いとお客様に露骨な不満をぶつけられてしまったりするのです。
入社数時間後、場合によっては数十分後に、上司からほったらかしにされ、お客様からは不満をぶつけられる新人スタッフ。私の経験上、こういう思いをすると新人スタッフは大きく傷つき、翌日から出社しなくなるケースが多い印象があります。
原因が店長の多忙さにあるのなら、店長を暇にさせるか、店長以外のスタッフにトレーナーを務めていただくことです。もっとも、店長が暇になることはまずあり得ませんので、私はベテランのアルバイトスタッフをトレーナーとしてお勧めしています。
「アルバイトにトレーナーなんて」と思った方、是非、やらせてみて下さい。そのアルバイトの意外な一面を見つけることができるかもしれません。
現場の最前線で働くアルバイトスタッフがトレーナーをするとどうなるか。いつでも現場にいるので、新人にじっくり手厚くOJTを行ってくれるだけでなく、OJTを終えた新人スタッフを現場でフォローアップすることも可能です。
副次的な効果として、トレーナー役であるベテランアルバイト自身の能力開発にもなります。どんなにベテランになっても初めてトレーナーを行うと「いやぁ、教えるのって難しいっすね」と口をそろえたように言います。何でもそうですが、「分かっているつもり」であることと「他人が理解できるように説明できる」ことには大きな違いがあります。
他人が理解できるように説明できるようになって、初めて分かることはたくさんあるはずです。
経営者としては、OJTは現場でやるものだからという理由で現場に任せきりにせず、有効に機能しているか定期的に店長からヒアリングをして、対処していく必要があります。
このような取組みによって、新人スタッフの定着率向上、ベテランスタッフのスキルアップが図ることができ、OJTがロードサイド店舗の活力を生み出すこととなるのです。
メルマガ会員様募集中
メルマガ会員様には、リアル店舗の現場経験20年以上、コンサルティング歴10年以上【通算30年以上のノウハウ】を凝縮した【未公開のコラム】や、当サイトに掲載したコラムの【解説動画URL】を優先的に配信しています。
登録はこちらから
↓↓↓
電子書籍のご案内
1年で70人のアルバイトに辞められたガソリンスタンド店長が人材に全く困らなくなった理由:育成編~人材が育つ職場と人材に見放される職場の境界線~
2020年3月15日発行 定価1,055円