小売業の販売促進戦略として、【プル】・【プッシュ】・【プット】戦略があり、プルは顧客を呼び込むこと、プッシュは顧客に売り込むこと、プットは顧客が自主的にお買い上げいただくことを目的とした戦略であることは、以下のコラムで説明したとおりです。
ガソリンスタンドの経営で知っておきたい3つのP
ガソリンスタンドで扱う商品の利益率を見てみると、ガソリンや軽油といった燃料油よりも、オイルやタイヤといった油外商品の方が高いため、ガソリンスタンドはプル戦略で呼び込んだ顧客に、プッシュ戦略やプット戦略を駆使して、油外商品の売上を高めようとします。
今回のコラムでは、このプッシュ戦略とプット戦略の具体例から、ガソリンスタンドの儲かる販売戦略をいかに構築するべきかを見ていきます。
プッシュ戦略の事例
あるガソリンスタンドでは、エンジンオイルの販売数量が激増しました。関連会社に勤務していたある社員がスタッフとしてその店舗に赴任し、売りまくったからです。その売り方は典型的なプッシュ戦略でした。例えば顧客とのやり取りは以下のようなものです。
スタッフ「オイル交換した方がいいですよ」
顧客「急ぐ用事があるので今日はちょっと…」
スタッフ「では、当店の代車で用事を足してきてください。もちろん代車は無料でお貸しします」
顧客「…」
また、以下のようなケースもありました。
スタッフ「オイル交換した方がいいですよ」
顧客「主人に聞いてみないと分かりません」
スタッフ「では、今ご主人に電話で聞いてみてください」
顧客「…」
このように、顧客の断りをことごとく論破し、この手法を他のスタッフにも教えてエンジンオイルを販売していました。ですが、結果として顧客からのクレームが相次ぎ、このスタッフは会社を追われるように辞めていきました。
プット戦略の事例
別のあるガソリンスタンドでは、それまでのプッシュ戦略主体の販売から、プット戦略に方針を転換しました。具体的には接客マニュアルを整備し、社員が泊りがけの合宿を行って、このマニュアルをマスターし、アルバイトスタッフに広げていきました。マニュアルでは、油外販売の声掛けを以下のように変更しました。
【変更前】「洗車いかがですか。」
【変更後】(洗車メニューボードを見せながら)「当店では800円より洗車のコースをご用意しております。朝7:00から夜10:00までご利用できますので、お気軽にお申し付けください。」
【変更前】「オイルやバッテリーの点検はいかがですか。」
【変更後】(点検項目が記載されたボードを見せながら)「当店ではエンジンルームの点検を無料で実施しております。いつでもお気軽にお申し付けください。」
このように変更し、全スタッフに徹底しましたが、油外商品の販売は、さほど伸びることはありませんでした。
バランスの重要性
プッシュ戦略とプット戦略は【セット】で考えなければいけません。エンジンオイルなら、それを点検し、交換を顧客に勧め、顧客に断られたら、しつこく食い下がることなく、点検結果を記入したカルテをお渡しし、次回の交換に繋げるべきでしょう。
この際に、【車両番号と接客履歴】を紐づけて管理し、スタッフ間で共有できるようにしておくと、その日にお勧めしたスタッフが不在の別の日にご来店されても、他のスタッフが前回の接客を引き継いでアプローチすることが可能です。この顧客管理システムは店頭にエクセルがインストールされたパソコンがあれば活用できますので、以下のコラムを参考にしてください。
儲かるロードサイド店の顧客管理
今回のコラムでは、ガソリンスタンドの儲かる販売戦略を構築する留意点として、プッシュ戦略とプット戦略をセットで考え、顧客管理をするべきであることをご紹介しました。油外商品の販売促進のヒントになれば幸甚です。
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