現在、ある美容室に勤務し、これから独立して美容室の開業を予定している方からのご相談に触れる機会がありました。当面、人材は雇わず、創業者ひとりで店舗運営を行う予定ですが、開業後の集客策、つまり販売促進戦略に不安を感じるとのことでした。
現時点で行う予定の販売促進戦略は以下の通りです。
1.自店のホームページ立ち上げ
2.Twitter やLINE@を利用し、店舗の予約情報やお知らせなどを配信
3.InstagramやSNSを利用し、髪型の最新デザインなどを配信
4.ホットペッパービューティーなどの24時間ネット受付のシステムを利用
美容室を開業しても、顧客が来店しなければ売上は立ちませんので利益も確保できないことになります。よって、まずは販売促進戦略を考えようとする気持ちは理解しますが、実は販売促進戦略を考える前に決めておかなければならない戦略が3つあります。
美容室が販売促進戦略を考える前に決めるべき戦略1:製品戦略
美容室はサービスを提供しますから「製品戦略」を「サービス戦略」と読み替えてもよいでしょう。要は、提供するメインの製品やサービスは何か、という点を決めなければならないということです。
「美容室だから、カット、カラー、パーマを提供するんです」というのと、「長年の美容師としてのカウンセリング力を活かしたその方にとってのベストな髪型を提供するんです」では、わけが違うことは一目瞭然のはずです。
このように、ご自身の強みを活かしてどのような顧客ニーズを満たすのかを製品戦略で決めることで次の戦略が決まることになります。
美容室が販売促進戦略を考える前に決めるべき戦略2:価格戦略
店のメインとなるサービスを製品戦略で設定したら、それに見合う価格戦略を設定します。これには様々なものがありますが、代表的なものとして、初期高価格政策と初期低価格政策があります。
初期高価格政策は、高価格設定により、開店直後から高級なイメージを顧客に与え、一定レベルの富裕層やこだわりの強い層を取り込み、徐々に値下げをして顧客層を拡大していく戦略です。ただし、開店直後に安値志向の顧客は取り込めませんので、客数の確保で苦労する可能性があります。
初期低価格政策は、低価格設定により、開店直後から大衆的なイメージを顧客に与え、多くの顧客を集めようとする戦略です。ただし「安かろう悪かろう」ではないか、というイメージを与えたり、その後、高価格路線にシフトすることが困難になったりする可能性があります。
製品戦略で設定したサービスについて、差別的優位性が大きければ大きいほど、高価格路線がとりやすくなり、それが小さければ小さいほど、競合の価格に合わせたり、低価格路線をとったりすることになります。その上で次の戦略を決めることとなります。
美容室が販売促進戦略を考える前に決めるべき戦略3:チャネル戦略
美容室のチャネル戦略では立地を検討しますが、製品・価格戦略と整合性の取れたチャネル戦略にする必要があります。
例えば、飲食店でも、立ち飲みなど低価格で高い客数の回転を狙う場合は、客数が必要なので駅前立地が多いですが、割烹など高価格で低い客数の回転を狙う場合は、駅からやや離れた場所に立地しています。
当然のことながら、駅前立地は利便性が良い分、家賃・地価が高額ですし、駅から離れると駅からの距離的な利便性は低下しますが、家賃・地価は安価なものとなります。これらも踏まえるとともに、場所的な観点からは、出張対応をするのかどうかも決めておくと良いでしょう。
これらの戦略を決めた上で、販売促進戦略が決まることになります。冒頭のご相談者は、ネットでの集客を考えているようですが、製品・価格・チャネル戦略を通じて、ターゲットが高齢層である場合は、紙媒体での販売促進戦略も検討しなければならないでしょう。
また、若年層をターゲットとして低価格戦略を展開するのであれば、若年層が集まりそうな店舗にチラシを置いてもらうなど、コラボレーション・マーケティングを検討する必要もあるでしょう。
今回のコラムでは、美容室が販売促進戦略を考える前に決めるべき3つの戦略として、1.製品戦略、2.価格戦略、3.チャネル戦略、を挙げました。集客に意識が向くあまり、販売促進戦略を真っ先に検討することは、効果・効率を下げてしまうことに留意しておきましょう。
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