人間ドック直前のダイエット
ある女性の話です。この方はひと月後に人間ドックを控えており、ダイエットを開始したとのことでした。そして人間ドックを終えたあたりから仕事が忙しくなるので、その後は、ダイエットを継続するかどうかは分からないとのことでした。
「一時的なダイエットでは根本的に痩せないし、健康になってないですよね」という言葉を投げかけたところ、人間ドックの数値は記録に残るため、せめて体重だけは良好な数値にしておきたいとのことでした。
確かに気持ちが分からない訳ではありません。私たちがカメラの前で「いい顔」をしたり、ポーズをとったりすることも同じ心理だと思います。
しかし、人間ドック直前だけのダイエットは、短期的な効果のみに着目し、中長期的な効果を検討していない典型的な事例です。これが体重の話だけであれば良いのですが、経営を考えるときに、この視点だけでは問題です。
短期的視点の経営者
あるサービス業の経営者が弊社に相談へ訪れた時の話です。私が「御社がターゲットとしている顧客は誰ですか」と聞いたところ「今すぐ売上が欲しいんです。ターゲットなんて定めていたら、お客さんが少なくなってしまいます。あえて言うなら日本全国、いえ、全世界の人々が当社のターゲットです」とおっしゃいました。
この発言は、典型的な短期的視点です。サービス業は、サービスの生産と消費が同時に行われる業種です。サービスを提供するなら、その場に従業員と顧客がいなければなりません。全世界にサービスを提供するということは、全世界にサービスを提供しに出かけるか、全世界にサービスを提供できる店舗網を構築しなければなりません。従業員数名のこの店舗では、非現実的と言えるでしょう。
居住地域にせよ、年代にせよ、ライフスタイルにせよ、来店頻度にせよ、ターゲットとする顧客を定め、それに応じた販売促進を地道に行い、今日の売上ではなく、明日以降の売上をいかに得るかを検討する。これが中長期的視点に基づく経営と言えるはずです。
経営者に必要な視点
経営者に必要な視点として、事業全体を俯瞰する「鳥の目」、現場目線の「虫の目」、今後のトレンド・流れを見る「魚の目」が挙げられますが、中長期的視点とは、この「魚の目」を身につける、と言い換えて良いと思います。
一時的な売上増は、一時的に経営を楽にさせてくれるかもしれません。しかし、長期的に経営を楽にさせてくれるとは限りません。いつ売上が厳しくなるか、常に不安を抱えながら事業展開をすることになります。強引な販売が目立ち、顧客離れを引き起こす要因ともなりかねません。目先の売上を追うことは罠があると考えましょう。
とはいえ目先の売上が欲しいのは分かります。それを踏まえて、売上を継続的に得る仕組み、中長期的に儲かる仕組みを作り続けていく。それが店舗の体幹を強くする、と言うことだと思います。
急がば回れ、とはよく言ったものです。
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