「あ、この店、もしかして潰れた?」長野県伊那市で過去に2度ほど食事をした焼き鳥店の前で私は呟きました。日本政策金融公庫によると、全業種平均の廃業率は10.2%、これに対して、飲食店の廃業率は18.9%と目が潤むくらい大きく上回っています。
この要因のひとつとして、参入障壁が低いため開業者が多く、競争が激化しやすいことが挙げられます。また、今年10月には8%から10%へと消費税率の引上げが予定され、さらにさらに逆風が吹くことが予想されています。
これらを踏まえ、今回のコラムでは、ある居酒屋の女将さんの対応から、飲食店が平日における客数を伸ばし、生き残りを果たすための対応を見ていきます。
聞き上手な居酒屋の女将さん
前述の伊那市において、平日に2泊3日で仕事をする機会に恵まれました。私は、昨年も当地に複数回、仕事で訪れ、夜は現地の居酒屋で食事をとっており、今回、まず1泊目の夜は以前伺った焼き鳥店で食事をとるつもりでした。ですが、冒頭のように休業の張り紙があったため、やはりかつて伺ったことがある近隣の居酒屋へ足を向けることにしました。
その居酒屋は、とても話し好きの女将さんが切り盛りしており、その夜も美味しい食事とお酒、そして女将さんとの会話を楽しむことができました。そして、翌日の夜、ホテルのスタッフがイチオシしていたことや、店舗のホームページも充実していることから、違う居酒屋に行ってみました。
前夜同様、その居酒屋も、美味しい食事とお酒、そして女将さんとの会話も楽しむことができました。
さて、1泊目の居酒屋と2泊目の居酒屋、どちらが楽しかったか。文句なく2泊目の方でした。その理由は私が女将さんに発した言葉の量の違いです。1泊目の居酒屋はどちらかというと私が聞き役でした。これに対して2泊目の居酒屋はどちらかというと私が話し役だったのです。
人は、自分の話を聞いて欲しいというニーズがあります。そして、居酒屋の店舗スタッフがこれに応えやすいのが、客数が少ない平日です。2泊目に利用した居酒屋の女将さんは、その聞き方が上手であり、そのポイントが今回挙げる3つの対応です。これを使った話の聞き方により、顧客満足度を高めておくとリピーターとなりやすく、客数増加に繋がります。
客数を伸ばす対応1:頷き・相槌
相手の話を聞く際に、話を理解しているサインを出しながら聞くと、相手は聞いてもらった感を抱き、満足度が高まります。頷き・相槌は、小さなものや大きなもの、頻繁にするものやたまにするものなど理解度や話のペース、タイミングなどで使い分けることが有効です。
「うんうん」「うーーん」「そうそうそうそう」2泊目に利用した居酒屋の女将さんは、これをうまく使って、私の話を引き出していました。
客数を伸ばす対応2:繰り返し
「いやぁ、あの時は感動したなぁ」「感動したんですねぇ」
「何か泣けてくる話ですよね」「ホント、泣けてくる」
「遠慮してたみたいでしたよ」「あー、遠慮してたんでしょうね」
このように、相手の話のキーワードを繰り返し、話を理解しているサインを出すことで、話し手は聞いてもらった感が高まります。この場合のポイントは、相手の話をとにもかくにも機械的に繰り返すのは逆効果で、響いたフレーズだけを繰り返すことです。
客数を伸ばす対応3:言い換え
今回は長野県への出張でしたが、女将さんとのやり取りの中で、違う出張先で、諸々の都合でタクシーを利用し、15,000円ほどの運賃を支払って移動した話になりました。降車の際に、売上を確保したいそのドライバーが「次回当地にいらしたら、私の携帯に電話いただけますか」と言った話になりました。
これを受け、女将さんは「あー、ドライバーの方、稼ぎたかったんですよね」とこの話をご自身なりに言い換えました。このように、相手の話を言い換えることにより、理解をしていることを示します。
なお、聞いた話が理解不足であっても、その言い換えの内容によって、聞き手の理解不足を補う話を、話し手から引き出せる効果があります。
平日の客数を伸ばしたい飲食店が行うべき3つの対応として、1.頷き、相槌、2.繰り返し、3.言い換え、を挙げました。
重要なことは、平日だからこそ、顧客と会話ができる余裕が店舗スタッフに生まれるということです。その際に、今回の3つの対応を活かすと「傾聴力」が向上します。
最後に一点。私は、このお店で日本酒を一口飲んだら水を一口、という形で水を挟みながら飲んでいたのですが、会計をする際に「お水を挟みながら飲んでらっしゃいましたよね。上手な飲み方をされるお客様だなぁと思って、ずっと見てました」という殺し文句が付け加えられたことを申し添えておきます。
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