同社は主に事業者向けに電気工事を提供していますが、新型コロナウイルス感染症の拡大が招いた景気の停滞により、工事の需要が減少し、業績が低下してしまいました。また、工事を実施するにあたり、オンラインの非対面型打ち合わせを要望されるようになりました。
そこで、同社は業績の拡大と非対面型業務の推進を目的に、それらに要する費用の一部を小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>で調達しようと考え、計画書を作成し申請したところ、採択という結果を得ることができました。そこで、同社が作成した計画書から、採択された理由を検証し、採択の可能性を高める計画書の書き方を検討していきます。
下図は当補助金申請時に提出する「【様式1】経営計画および補助事業計画」の構成ですが、今回のコラムでは、下図の赤枠部分<補助事業計画>「3.補助事業の効果」の書き方を見ていきます。なお、当コラムの内容は2022年2月1日時点の情報に基づいています。
1.持続化補助金で非対面型業務に取組んだ電気工事店の事例【補助事業の効果編】
持続化補助金で非対面型業務に取組んだ電気工事店の事例【補助事業の効果編】(1)効果を数値で示す
同社は補助事業の効果として、見込むことのできる売上高を記載しておりました。このように効果を数値で示すことは、その大きさを理解しやすくなります。つまり、補助事業の実施によって「売上の増加が見込まれる」と記載した場合と「売上が100万円増加することが見込まれる」では、効果の大きさに関する訴求力が違うということです。
また同社は、1,2,3年後それぞれにおいて見込むことができる売上高を記載して、目先の効果だけでなく中期的な視点でも効果を述べるとともに、客数の増大という効果も述べておりました。売上高は客数と客単価の掛け算で算出されますが、同社は客数の増大が売上高向上の根拠であることを訴求したということです。このように、中期的な視点を持ち、根拠を示したことも採択を引き寄せた要因のひとつと考えられます。
持続化補助金で非対面型業務に取組んだ電気工事店の事例【補助事業の効果編】(2)補助事業の目的を意識する
当補助金のルールブックである公募要領は小規模事業者持続化補助金低感染リスク型ビジネス枠のホームページからダウンロードできますが、それには以下の記載があります。
このポイントのひとつに下線部分「対人接触機会の減少」が挙げられ、当補助金を使ってこれが実現できる見込みが薄ければ、採択の可能性は小さくなってしまうでしょう。同社の場合、補助事業の効果を複数挙げておられましたが、それらを説明する文章の出だしは全て「オンラインツールの導入により」でした。
つまり、当補助事業を実施することは対人接触機会が減少し、それによりどのような効果があるのかという趣旨で記載していたということです。このように補助金の目的を意識して効果を記載したことも同社が採択を引き寄せた要因のひとつと考えられます。
持続化補助金で非対面型業務に取組んだ電気工事店の事例【補助事業の内容編】(3)リスク低減と収益向上という切り口を使う
これまで見てきたように同社は補助事業の効果として、オンラインツールの導入により対人接触機会の減少を通じて新型コロナウイルス感染リスクを低減させる効果を見込めること、そして、それを活用した取組みにより売上高拡大という収益を向上させる効果が見込めることを記載していました。
このことは、リスク低減と収益向上のどちらかに偏ることなく、両面から効果を記載したということです。このように多面的な視点で効果を記載した点も同社が採択を引き寄せた要因のひとつと考えられます。
今回のコラムでは、同社が記載した「3.補助事業の効果」から、採択される計画書のポイントとして(1)効果を数値で示す、(2)補助事業の目的を意識する、(3)リスク低減と収益向上という切り口を使う、を挙げました。
2.持続化補助金で非対面型業務に取組んだ電気工事店の事例【まとめ編】
ここまで当コラムを合わせて4回にわたり、同社が採択を引き寄せた要因を見てきましたが、今回を含めた同社事例におけるコラムの内容をまとめると以下となります。
なお、過去3回のコラムは以下となります。
同社の計画書の特徴として、公募要領をしっかり読み込んだことがうかがえました。また、計画書フォーマットの但し書きを忠実に守って記載した印象もあります。このような基本を踏まえた計画書が採択の可能性を高めますので、参考になれば幸甚です。
3.小規模事業者持続化補助金の計画書作成をサポートします。
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