人手不足のガソリンスタンドに不足している3つの力

　「もうやってられない…」あるガソリンスタンドの中堅スタッフが呟き、数日後に退職届を提出しました。その店舗は人手が不足しており、中堅スタッフである彼の負荷は増すばかりでした。

　人手不足のガソリンスタンドはこのようにして既存スタッフを失い、そのような環境の職場に入社してくる新規スタッフも少なく、仮に入社しても早期離職をしてしまい、負のスパイラルに陥っていきます。

　全国のハローワークにおける求人数と求職者数から算出した有効求人倍率（求人数÷求職者数）は、2019年1月に1.63倍と過去10年間で最高値を記録しています。これは、仕事を求める方1名に対して1.63の事業所がその1人を欲しがっている、つまり人材の奪い合いが10年間で最高に激しくなったと言えます。

　仕事別に見ていくと、商品販売に関する仕事が2.3倍、接客・給仕に関する仕事が2.96倍となっており、商品販売や接客が絡むガソリンスタンドの人手不足も深刻なものであろうと推測されます（マイナビ転職https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/caripedia/77より）。

　しかし、そのような状況の中でも、人材が定着し、店長は現場での接客など定型的な業務は部下に任せ、戦略の策定や情報収集といった非定型的な業務に専念することにより、店舗を繁盛させている事例もあります。

　そこで、今回のコラムでは、人手不足に陥るガソリンスタンドに不足する3つの力についてみていきます。

　人手不足に陥っているガソリンスタンドは、当然のことながら新規採用に困っています。反面、あるガソリンスタンドでは、そこで働きたい方が殺到し、次の採用まで2年待ちという状況です。
　【参考コラム】2年先の人材まで確保しているガソリンスタンドの取組みとは

　両者の違いの1つに人材の「引き寄せ力」があります。人手不足に困っていない上述のガソリンスタンドは、前面道路の歩行者に挨拶をしたり、アルバイトを卒業した方も交えた社内の飲み会・食事会を行ったりして、引き寄せ力を発揮しています。

　その他にも、既存のアルバイトスタッフの満足度を向上させ、新規スタッフの紹介を得たり、メッセージ性・インパクトのある魅力的な募集告知を行ったりして引き寄せ力を発揮しているケースも多々あります。
　【参考コラム】
　止血をしてから輸血をする！人手不足を克服する7つの対策
　募集しても応募がない。自店の人材確保ができない3つの理由

　上述の「引き寄せ力」が人材を集める力であれば、「引き込み力」は集めた人材に「このスタンドで働きたい」と思わせる力です。

　ネットの募集を見て店舗の下見に行ったら、店頭でもちゃんと募集告知があったり、店舗が綺麗だったりすること、応募面接に行ったら、スタッフがニコニコと挨拶してくれること、面接時に店長が自店のビジョンを熱く明確に語ること、など給与以外に働くモチベーションを高める要素はあちこちにあります。

　引き込み力の高いガソリンスタンドは、常に「どうしたら人材の働くモチベーションが高まるか」を考えているものです。

　「取り込み力」とは、働き始めたスタッフが「ずっとこのスタンドで働きたい」と思わせる力です。そのためには、まず早期退職を防ぐ取組みが必要です。これに関しては以下のコラムを参考にしてください。
　【参考コラム】
　また辞められた…。アルバイトの早期離職を防ぐ3つの対策
　アルバイトスタッフがすぐ辞めるガソリンスタンドの特徴とは
　
　新規に採用されたアルバイトスタッフが長く働くようになってくると、最初は店長の言うことを素直に聞いていても、反抗的になるケースが出てくるかもしれません。そのような事態を迎えないために店長は状況に応じたリーダーシップを理解しておく必要があります。こちらは以下のコラムを参考にして下さい。
　【参考コラム】
　具体的な行動に基づくリーダーシップ
　部下にリーダーシップを発揮させるためにとるべき3つの行動

　今回のコラムでは、人手不足のガソリンスタンドに不足している3つの力として、1．引き寄せ力、2．引き込み力、3．取り込み力、を挙げました。

　異性との交際を例に取れば、
　1．引き寄せ力は「会ってみたい」と思わせること、
　2．引き込み力は「会いたい」と思わせること、
　3．取り込み力は「また会いたい」と思わせること、となります。

　人手不足の場合は、3つの力の中でどれを強化するべきか、現在強いと思われる力をどのようにしてさらに強化するべきかを検討していきましょう。