前々回のコラムからご紹介している、こちらの食品製造販売業者はもともと製造業として事業展開をしていましたが、工場の一角にイートイン専用のカフェスペースを設け、売上を向上させました。そこで、イートインだけでなくテイクアウトも強化して、さらに売上を向上させたいと考えました。
そのためには告知が必要ですが、早期に効果を得るには、ある程度の費用負担が発生します。その負担を和らげるべく、販路開拓等に要する費用について、原則3分の2、上限50万円を補助する小規模事業者持続化補助金を活用することとしました。
同社が、この補助金に採択された計画書をどのように作成したか、そのプロセスをご紹介するシリーズの3回目は、下図応募資料中、様式2-1<経営計画>「2.顧客ニーズと市場の動向」を見ていきます。
どんな顧客のニーズを記載するべきか
この「2.顧客ニーズと市場の動向」を「顧客ニーズ」と「市場の動向」に切り分けて記載されているのは、非常にすっきりしていて読みやすいと思いました。
その「顧客ニーズ」ですが、同社が工場で製造した製品を購入する事業者のニーズだけが書かれていました。ですが、同社はカフェも併設しており、今回の応募では、このカフェのテイクアウトに関しても補助を受けようとしているわけです。
すると必然的に、「工場製品を購入する事業者のニーズ」の他に「カフェを利用する消費者のニーズ」も盛り込む必要があります。
混同に注意
また「市場の動向」では、以下の内容が記載されていました。
①業界全体が後継者不足や資金繰りの悪化等で廃業・倒産が増加していること。
②取引先は自社の作業負担を軽減し、人件費削減の為、カット・加工済みの製品を仕入れる傾向が強いこと。
③サイズを指定した製品など、製造時に細かな対応が必要な案件が増えていること。
④安全・安心を重視する取引先から、様々な検査書類の提出を求められるケースが多いこと。
これらのうち②~④は「工場製品を購入する事業者のニーズ」、つまり「市場の動向」ではなく「顧客ニーズ」と捉えられます。よって、そちらへ移動していただくとともに、同社製品の市場の動向として、総務省統計局の家計調査などから市場規模の推移を調べて記載していただきました。
さらには、工場併設のカフェに関する市場の動向も記載する必要があります。カフェを利用する方は地域住民が多いことから、地域の人口動向を調べて記載していただきました。ただし「市場の動向」に盛り込む内容はそれだけでは足りません。
「強み」を見出すために
「2.顧客ニーズと市場の動向」に続くのは「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」です。当コラムではこの「強み」を「顧客に価値を提供でき、競合より優れている経営資源」と定義付けます。
そうすると、前述のプロセスを通じて「顧客ニーズ」は把握しているわけですから、「顧客に価値を提供できる経営資源」は見出せますが、もう一点、競合動向も調べないと「競合より優れている経営資源」は見出せないことになります。
そこで、同社製品とカフェについて、商圏内の競合動向も調べる必要があります。お勧めしているのは、競合の社名、住所、URL、特徴を一覧表にすることです。特徴に関しては、自社から見た印象というレベルで結構です。
これらを行うことは、公募要領に記載のある、下図(クリックすると拡大します)「審査の観点」赤枠部分「自社の製品・サービスや自社の強みを適切に把握しているか。」に対応したものとなります。
このようにして、「2.顧客ニーズと市場の動向」をブラッシュアップしていただきました。この部分は、計画書全体に影響を及ぼす基礎部分ですので、今回の内容を参考にしてきっちり仕上げていただければと思います。
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