そのフランス料理店は、テイクアウトを強化するために、小規模事業者持続化補助金を活用することにし、計画書(様式2と3)を作成しました。
当コラムでは、それを採択されるレベルにブラッシュアップしていくプロセスを複数回にわたって紹介していきますが、2回目の今回は下図、様式2<経営計画>の「2.顧客ニーズと市場の動向」について見ていきます。
それは顧客ニーズなのか
同店が「2.顧客ニーズと市場の動向」に記入してきた内容を見ると【顧客ニーズ】【市場の動向】と見出しを設けてそれぞれを記載していました。このように、適切な見出しを設け、それに基づいて記載することは、思考が整理され、結果として読み手にその内容を伝えやすくなります。
【顧客ニーズ】には、「外食、中食の利用頻度」、「食料品全体に占める外食、中食、内食の構成比」が記載されており、【市場の動向】には、「外食と中食それぞれの市場規模の推移」が記載されていました。
ここで【顧客ニーズ】として書かれていることは本当に【顧客ニーズ】か?という視点で見てみると、実は【市場の動向】であるわけです。そこで、当欄に記載されたすべてを【市場の動向】にまとめ、新たに【顧客ニーズ】を書き出す必要があります。
【顧客ニーズ】はミクロ環境、【市場の動向】はマクロ環境です。ミクロ環境は、企業が直に接する環境であり、マクロ環境はミクロ環境の外側にある、企業が直に接することのできない環境という切り分けを意識する必要があります。
実は私の経験上、【顧客ニーズ】をしっかり記載できている事業者は多くない印象です。同店のように【顧客ニーズ】として記載している内容が「市場の動向」であるなど【顧客ニーズ】ではないケースが多いのは、この切り分けができていないからという印象があります。
「Quality(品質)」に対するニーズ
なお、【顧客ニーズ】を洗い出す際にお勧めしている切り口は、Quality(品質)、Cost(費用)、Delivery(納期)の頭文字をとった「QCD」ですが、同店の場合は取扱商品上、Cost、Deliveryに該当する「低価格」「短納期」に対する顧客ニーズは多くないことが想定されます。反面「Quality」は深掘りする必要がありそうです。
顧客は同店から、料理やドリンクといった有形物、雰囲気や接客といった無形物の両方を通じて「Quality」を受け取るわけですが、それぞれに対して、どのような「Quality」を求めているのか、それによって得たいことは何なのか、日々現場で働いている肌感覚も活用して洗い出します。「高い品質」で済ませずに具体的に示すことが重要です。
例えば、「当店のディナーを用いた接待の場で、いつもお世話になっている得意先を満足させたい」「当店のランチをテイクアウトすることで、昼休みを有効に使いたい」などが挙げられます。
競合に関する記述の必要性
これまで見てきた「2.顧客ニーズと市場の動向」ですが、【市場の動向】として競合他社に関する記述がない点も気になりました。というのも、次に続く「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」は、競合よりも優れていることで「強み」と言えるからです。
競合他社に関しては、屋号、住所、自店からの距離(歩いて〇分)、URL、特徴などを一覧にすることをお勧めしています。競合状況の把握は、自店の強みが本当に強みとなっているのかを検討する材料として必須と言えるでしょう。
今回のコラムでは「2.顧客ニーズと市場の動向」について見てきましたが、これら外部環境に対応できる事業展開が、収益拡大に繋がりますので、是非、正しく外部環境を把握していただきたいと思います。
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