新型コロナの影響でテイクアウトを開始・強化する飲食店が増えました。そのような事業者向けに、テイクアウトを中心としたイタリア料理店を展開しようとする事業者が、小規模事業者持続化補助金に採択され、円滑なスタートを切った事例をご紹介します。同店は、予め様式2と3に記入して来られましたが、これを採択レベルへいかにブラッシュアップしていったかを見ていきます。
下図は、当補助金に応募する際の提出資料です。当コラムでは様式2-1を様式2、様式3-1を様式3と表現しますが、これらが審査の対象となります。今回は、下図赤枠部分を見ていきます。
補助事業に繋がる事業の説明を
まずは「1.企業概要」ですが、全国商工会連合会、日本商工会議所が公表している記入例は、以下となっています。
この記入例にある「売上総額の大きい商品」「利益総額の大きい商品」を記載したいわけですが、同店はこれまで衣料品店を営んでおりました。諸々の事情により、既存の店舗を改装し、数か月後にイタリア料理店として再出発するため、テイクアウトを訴求する看板やチラシの費用を当補助金で賄いたいという思惑がありました。
記入例にある「売上総額の大きい商品」「利益総額の大きい商品」を同店の場合、どのように書くべきでしょうか。衣料品の実績は書けますが、それは補助事業に繋がるものではありません。
そこで、参考までに過去3年間の衣料品店としての業績(店舗全体の売上・利益)を記載するとともに、今後1年間のイタリア料理店としての実績見込みを商品別に売上高と利益額に分けて書くこととしました。
また、店舗やメニューの写真の他に、経営者やスタッフの顔写真も入れ、リアリティを高めていただきました。
顧客を描く
次は「2.顧客ニーズと市場の動向」ですが、予め同店が記載された内容を見ると【顧客ニーズ】と【市場の動向】と見出しを設け、それに基づく記述をされており、これは良いと思いました。
【顧客ニーズ】ですが、今後は他のイタリア料理店で修行してきた、現経営者のご子息が中心となって事業展開していくわけで、ここに書く内容は、他店での修行経験を踏まえたイタリア料理に対する顧客ニーズを記載することとなります。
気になったのは「顧客ニーズは多種多様化している」という記述があるものの、多種多様な顧客ニーズが記載され尽くしていないことです。これは、顧客を描いていないからという印象を持ちました。
若年層と中高年層、男性と女性、ビジネスマンとファミリーという形で顧客を描き、どのようなニーズがあるのかを具体的に記載することが必要です。これがしっかり把握できていれば、それに応える事業展開は効果を出しやすいことになるからです。
統計データを活用する
【市場の動向】では、競合と顧客の動向が記載されていました。競合の動向に関しては、価格に関して詳しく書かれていましたが、それ以外が薄い印象です。価格を取り上げるのであれば、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)からなる「マーケティングの4P」を切り口にしても良いでしょう。
また、2世帯住宅が「多い」、Uターンしてくる人が「多い」といった「量」を示す記述は、統計データなどの裏付けがあると説得力が増します。もちろん出典を示す必要がありますが、以下のサイトの活用が便利です。
・自治体のホームページ:人口や世帯数の推移が分かります。
・家計調査年報:日本国内の家計の支出を通じて個人消費の動向が分かります。
・経済センサス:全国・全産業の企業や事業所の動向が分かります。
・RESAS:産業構造や人口動態、人の流れなどなどが活用できます。
なお当補助金に応募する際のルールブックである、商工会・商工会議所が公開している公募要領には、参考として以下の記述がありますので、RESASの積極的な活用をお勧めします。
今回ご紹介したように、同店には「1.企業概要」では、補助事業に繋がる事業を詳しく書くこと、「2.顧客ニーズと市場の動向」では、顧客を描いてニーズを抽出すること、競合分析の切り口、統計データの活用を意識していただき、ブラッシュアップを行いました。
次回はこれに続く「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」から見ていきます。
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