小規模事業者持続化補助金を活用して、事業を拡大させたテイクアウト店は、どのようにして計画書(様式2,3)を採択されるレベルにブラッシュアップさせたのか。シリーズ2回目は、下図の赤囲み部分、様式2<経営計画>の「2.顧客ニーズと市場の動向」を見ていきます。
裏付けを示す
同店は、サンドイッチのテイクアウトに力を入れていますが、予め同店経営者が書かれてきた「2.顧客ニーズと市場の動向」の内容を拝見すると、以下の内容が記載されていました。
①極厚サンドが話題になっている
②極厚サンドの写真をSNSに公開する人が多くなっている
③極厚サンドを取り上げた新聞記事の写真と内容の説明
④パンの需要が増えている
⑤テイクアウト需要が増えるのは間違いない
このうち、①と②の根拠は③の新聞記事に示された内容となっており、説得力があります。反面、「増えている」「増えるのは間違いない」といった④と⑤の内容に裏付けがなく、「勝手に解釈している」と判断されても致し方のない内容となっていました。そこで、裏付けとなる根拠を探す必要があります。
家計調査年報の活用
このような場合にお勧めしているのは、「総務省統計局家計調査年報」です。これは日本国内において、ひとつの世帯が何にいくら支出したのかが示されており、需要を把握するには使い勝手が良いものです。ここに掲載されている「時系列」のデータを見ると、2人以上の世帯における1世帯当たりパンの支出はここ5年間で以下の通りとなっています。
2015年(平成27年) 30,507円
2016年(平成28年) 30,294円
2017年(平成29年) 29,957円
2018年(平成30年) 30,554円
2019年(令和元年) 32,164円
2017年(平成29年)までは低下傾向でしたが、その後盛り返していることが分かります。これを記載することで、上記「④パンの需要が増えている」という主張が説得力を持つことになります。
インターネット上の各種資料の活用
また、インターネットを活用して、様々な発表資料を活用することも一考です。例えば、上記「⑤テイクアウト需要が増えるのは間違いない」の裏付けとしては、ネット上で公開されている以下の資料が活用できます。
これは、消費税率が8%から10%に上昇するにあたり、テイクアウトには軽減税率が適用され旧税率の8%が適用されることを受け、税率8%と10%の差を気にするかどうかといったアンケート調査の結果です。
これによると、「気にする」「やや気にする」の合計が67.4%であり、テイクアウト需要が増えることが推測されることとなります。
「結論ありき」ではなく
このように結論の裏付けがあると説得力が高まるわけですが、大事なことは、正しい市場動向を把握することです。今回の事例では、パンの需要が増えているという仮説を立て、その裏付けとなるデータを探したわけですが、探していく中でその仮説が成り立たないことが分かる場合もあります。
その場合、仮説が間違っていたわけですから、事業の方向性を転換する必要があります。ですが、その事業の方向性を変えたくないため、裏付けになっていないデータを無理やり裏付けとして記載するケースもよく見かけます。万一、その内容で採択されたとしても、市場の動向を間違って把握していれば、事業はうまくいくはずはありません。
また、今回の事例では「2.顧客ニーズと市場の動向」欄のほとんどが「市場の動向」に偏っており、「顧客ニーズ」には触れられていない印象を受けました。さらに競合の動向についても「市場の動向」として見ていく必要があります。このような点にも留意して、偏見のない視点で外部環境を把握していただきました。
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