東京商工リサーチによると理容・美容業は2019年に過去最高の倒産数を記録しました。これに今回の新型コロナがさらなる影響を及ぼしています。このような厳しい状況の中で、中長期的な視点を持つ経営者は、資金を増やすことを考えます。
そのためには資金を調達し、増やす仕組みが必要です。この資金調達の方策としては、「稼ぐ」「借りる」「とる」があります。「稼ぐ」は売上・利益を得ることであり、「借りる」は文字通り金融機関などから借入を起こすことです。
また、「とる」は「盗る」であってはいけないわけで、合法的に実施しなければなりません。その手段として補助金の活用があります。
小規模事業者持続化補助金を使って資金調達をしようと考えた美容室の経営者が、どのようにして採択される計画書を作成したのかを紹介していくシリーズの4回目になる今回のコラムでは、下図応募資料の様式2-1<経営計画>「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」を見ていきます。
まずは整理を
当欄に同店の経営者が記載して来られた「強み」の重複部分を削ぎ落し、箇条書きに整理すると以下の内容になりました。
①日々従業員教育を欠かさず、技術の向上を図っている。
②接客姿勢に高い評価をいただいている。
③高いリピート率を維持している。
④パーマ・カラー・カット等の一般的な美容室のメニューの他に、ネイル・エステ等のメニューも加えた「美」の総合的なサービスを提供している。
⑤さまざまなサービスやそれに伴うアドバイスが受けられる。
このように整理した上でブラッシュアップしていきます。
「自社の強み」の切り口
まず、当欄は「自社や自社の提供する商品・サービスの強み」ですので、「(1)自社の強み」と「(2)自社の提供する商品・サービスの強み」に切り分けて考えます。なお、同店は物販店ではないので(2)は「自社の提供するサービスの強み」とします。
「(1)自社の強み」は、経営資源つまり「人」「物」「金」「情報」の切り口から検討します。前述の①②③を以下のようにまとめ直すと「人」、つまり人的資源の強みとして理解しやすくなります。
「日々従業員教育を欠かさず、技術力と接客力を向上させており、高いリピート率を実現できる人材が多数存在している」
この他にも「人」「物」「金」「情報」の切り口から自店の強みがないか検討する必要があります。
総合的な強みと細分化した強み
「(2)自社の提供するサービスの強み」は、前述の④⑤が該当するようです。そこで以下のようにまとめ直しました。
「パーマ・カラー・カットの他に、ネイル・エステ等のメニューも加えた総合的なサービスを提供することにより、ワンストップで『美』に関するサービス・アドバイスを提供できる」
つまり顧客としては、美容室の他にネイルサロンやエステサロンに行く必要がなく、同店1か所で美容に関する多くのサービスを受けることが可能だということであり、このようなケースのキーワードは「ワンストップ」となります。
この他にも、提供しているサービスの強みを検討しますが、「ワンストップ」というサービスの総合的な強みは把握できていますので、細分化して検討することも一考です。同店は、パーマ・カラー・カット・ネイル・エステというサービス構成ですので、それぞれのサービスについて強みを検討しても良いということです。
いざ自店における強みを尋ねられても即答できないケースが多いのは、自店の魅力に気付いていないということですし、強みを少ししか言えないということは、自店の魅力の量が少ないということです。今回の事例を参考に、より多くの強みを見出してください。
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