補助金は公的な資金ですから、採択されるには公的な視点を持った計画書を作成することが必要です。
小規模事業者持続化補助金に採択され、店舗改装資金を調達したある美容室の経営者は、どのようなプロセスで採択レベルの計画書を作成したのか、そのプロセスをご紹介していくシリーズの最終回となる今回のコラムは、下図の赤枠部分、様式2-1<補助事業計画>「4.補助事業の効果」、様式3-1「Ⅱ経費明細表」を見ていきます。
公的な資金を使うために
予め同店経営者が「4.補助事業の効果」として書かれてきたことをまとめると以下の2点になります。
- 地域における当店の認知度が向上する。
- 新規顧客の獲得が促進され、売上増加が実現する。
これらは【自店の効果】ですが、補助金という公的な資金を使うのであれば、公的な視点が必要です。つまり、【自店の効果】の他に【顧客の効果】【地域社会の効果】も当欄に盛り込む必要があるということです。
【顧客の効果】の例として、同店の改装により入店がしやすくなり、強みである「美」のワンストップサービスという利便性を得やすくなる、などが挙げられます。
【地域社会の効果】の例として、当店の利用により、ワンストップで髪だけでなく、顔や爪も美しくなる女性が増え、外出のモチベーションが上がることから、地域の消費が活性化する、などが挙げられます。
定量的効果と定性的効果
数値で表すことのできる効果を定量的効果、それが困難な効果を定性的効果と言います。前者は効果の高さが具体的に把握できるのに対して、後者はそれが把握できません。よって、可能な限り効果は定量的なものを設定する必要があります。
そこで、同店が書かれてきた「新規顧客の獲得が促進され、売上増加が実現する」という効果は、どの程度の新規顧客の獲得を見込むのか、どの程度の売上増加の実現を見込むのかといった数値を盛り込むとより説得力が向上するでしょう。
さらには、売上だけ増加しても利益が増加しなければ意味がありませんので、利益の増加見込み額や率も検討する必要があります。
新規顧客と既存顧客
また、同店は「新規」顧客の増加を効果として見込んでいますが、「新規」に対して「既存」顧客の効果を検討する必要があります。公的な資金を使う以上、幅広い効果を検討する必要があるためです。
そこで、リピーターがどの程度増えるのか、といった既存顧客の増加見込みを記載するとより説得力が向上するでしょう。
経費明細表記載の留意点
次に、様式3-1補助事業計画書②「Ⅱ.経費明細表」で気をつけたいのは、「内容・必要理由」の欄に「必要理由」が書かれているかという点、そして、複数行にわたり詳しく書かれているかという点です。
同店の場合、「店舗外装の改修工事一式120万円」しか書かれていませんでしたが、なぜ、それが必要なのか、という理由を細かく記載する必要があります。その内容は、ここまでの様式2と3に記載してきた内容と重複するかもしれません。ですが、「必要理由」の欄がある以上、しっかりと書かなければいけないと考えます。
さらには「一式」とまとめずに複数行に詳しく書く必要があります。同店は、【外壁の塗り替え】、【樹木の設置】、【入口の改装】を行うわけですから、少なくともこれら3つを説明するべく、3行が必要です。これは、下図「審査の観点」の赤枠部分に対応するためです。
このようにして、同店経営者は事前に書かれてきた内容をブラッシュアップさせて、小規模事業者持続化補助金に採択されることとなりました。今回のコラムでは、公的な視点、効果の切り口、経費明細表の記載について見てきました。同補助金の採択を目指す方においては、参考にしていただけると幸甚です。
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