売上の低下が止まらない
その雑貨店は、婦人服を主力商品とし、その他にも食品、文具、寝具など、幅広い商品を取り扱う、個人版ドンキホーテといった印象で古くから地元に根付いた事業展開を行っていました。
地域住民に愛され、長い間事業展開をしていましたが、近隣に大型ショッピングセンターが開業して以来、顧客の流出が止まらず、当然、売上も右肩下がりという状況の中、打開策を求めていました。
ドメインとは
この場合、打開策の考え方のひとつとして挙げられるのは、現状のドメインを明確にし、それを変更していく、という考え方です。ドメインは事業領域とも呼ばれ、「誰に」、「何を」、「どのように」提供するか、を定めることです。
「誰に」提供するかを明確にすることは、自社のターゲットを明確にするということであり、「何を」提供するかを明確にすることは、どのような顧客ニーズを満たすのかを明確にするということであり、「どのように」提供するかを明確にすることは、自店のどのような差別的優位性を活かすのか、という点を明確にする、ということです。
この雑貨店の当時のドメインは、
「誰に」:来店客に
「何を」:婦人服をメインとした雑貨を
「どのように」:安く提供する
というものでした。
そして、打開策として新規事業を考える際に「誰に」を変えることとし、来店客という消費者に対して提供するのではなく、事業者へ提供しようとしました。
具体的には、婦人服を比較的大きなロットで仕入れ、インターネットの卸売サイトに登録し、全国の小売店へ卸していく、というビジネスモデルを打ち立てました。しかし、ネット卸のサイトに登録するには、想像以上に費用がかかることが判明し、この新規事業は頓挫してしまいました。
ネット卸の失敗を受けて
次に考えたのが、出張販売です。顧客が来てくれないのなら売りに行けばいい、という考え方です。買物したいのに買物に行けない人は誰か、と考えた際に浮かんだのが、介護施設に入居するご高齢の方々でした。
この場合のドメインは、
「誰に」:介護施設に入居するご高齢の方に
「何を」:買物を楽しんでいただくことを
「どのように」:出張販売で提供する
となります。
上記のドメインは、「誰に」を変えただけでなく、「何を」をモノからコトに変えた点がポイントです。ただし、このビジネスモデルは、客数は多くなく、客単価も高くありません。施設によっては場所代を取られることもあります。そこで、施設側にもメリットがあるように、以下に示すもうひとつのドメインを設定しました。
「誰に」:介護施設の職員に
「何を」:買物時間を節約することを
「どのように」:出張販売に出向く際に日用雑貨を届けることで提供する
介護施設の職員の方々は、人員不足の中、勤務しており、日用雑貨などの買物時間を節約したいというニーズがあります。そこで、予め必要な日用雑貨を聞いておき、出張販売時にそれを届ける、というサービスを行いました。
本質を見失ってはいけない
この出張販売は、多くの介護事業者のニーズを捉えました。しかし、出張販売の収益で一安心というわけにはいきません。なぜなら、この雑貨店の本質的な課題は、店頭の活性化だからです。
そこで、出張販売で得た資金を可能な限り、店頭を活性化させるために使いました。具体的にはポイントカードシステムの導入です。
これにより、自店の上得意客を把握することができるようになり、ダイレクトメールなどの個別アプローチにより、売上高が前年を超えました。これは、実に12年ぶりのことです。
婦人服メインの儲かる雑貨店が実施している新規事業の活用戦略のひとつとして挙げられるのは、ターゲットを変えるだけでなく、モノを提供するという発想からコトを提供する発想への切り替えに基づく取組みである、と言えるでしょう。
婦人服店、ドメインに関する参考コラム
■高齢者が主要顧客の婦人服店が気付いた自店のもつ常識の間違い
■婦人服を扱う店舗で売上を向上させる方法
■大手チェーン店と差別化したい洋菓子店が売上をアップするために
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