周囲が廃業する中で生き残る飲食店3つのポイント

経営の姿勢

 昨年、群馬県のみなかみ町という場所で、別々の日に通算6日間に渡って仕事をする機会に恵まれました。弊社の最寄駅からは、新幹線を使えば1時間半ほどで到着できる距離で、仕事自体は21:00に終わるのですが、新幹線の本数が多くないため、帰宅が深夜になることや、現地の経済活性化にほんの少しでも寄与できればという想いもあり、伺った日は全て宿泊をしました。

 現地の方から宿泊先としてご紹介いただいたのが、地元、猿ヶ京温泉街の旅館でしたが、その宿をご紹介いただいた大きな理由は、飲食店が少ない状況の中、21:00過ぎに食事のできる飲食店が徒歩圏内に1軒だけあることでした。

 かつてはこの猿ヶ京温泉もかなり華やいだ時期があり、夜遅くまで営業している飲食店も多数あったそうですが、徐々に寂れてきて、飲食店の廃業も相次ぎました。ですが、なぜその飲食店は営業を継続できているのか。私は、何度かこの飲食店に伺ううちにその理由が見えてきた気がしました。

 その理由は、各地で生き残っている飲食店に共通しています。そこで今回のコラムでは、周囲で同業者の廃業が相次ぐ中、生き残ることができる飲食店のポイントを見ていきます。

周囲が廃業する中で生き残る飲食店のポイント1:会話

 この猿ヶ京温泉に立地する「ふくすけ」さんをご紹介され、21:00過ぎに初めて訪問した私は、飲み物と料理を頼み、一息つきました。そして、その頃合いを見計らって、カウンター内の店主が「○○さんからのご紹介ですね、こちらへは初めてですか?」と声を掛けてきてくれました。

 このお店をご紹介してくださった方が予め、根回しをしてくれていたようですが、長年事業を続けることができている飲食店は、1人で入店すると店舗スタッフから顧客に対してこのような声が掛かります。特に地方出張の場合、返答した私の言葉は当地の言葉ではありませんので、「どちらから来られたんですか」と話が続きます。

 このようにして会話が繋がっていくと、料理でお腹が膨れても、お酒は進むものですから、客単価が向上することとなります。

周囲が廃業する中で生き残る飲食店のポイント2:料理

 入店した私にまずはお通しが出たわけですが(写真の白い矢印)、お酒の他に私がお願いした料理は、イカ納豆と鯨のお刺身でした。

 さらに手羽先をお願いしたわけですが、すると「良かったら召し上がってください」と無料で新たなお通し(写真の白い矢印)を出してくれました。このちょっとした料理をお願いしていないのに無料で出してくれるのも、「長寿店あるある」です。

 人間は何かしてもらうと、何かお返しをしなければと思うもので、これを「返報性の原理」と言います。つまり、ちょっとした料理を無料で提供されたら、ドリンクの一杯でも追加で注文しようと思うものです。そして、店舗側としては、このちょっとした料理にもコストはかかっていますが、追加のドリンクで元は取れるはずです。

周囲が廃業する中で生き残る飲食店のポイント3:価格

 地方に立地する長寿店もしくは、繁盛店に共通するのは、安さを武器にしていないことです。仮に安かったとしても、近くに漁港があり物流費がかからないなど、しっかりと利益の取れる価格で提供しています。

 安値で戦いを挑む者は、安値で戦いを挑まれ、結果として大手に負けるのは目に見えていることです。暴利を貪りましょうとは言いませんが、しっかりと利益の出せる価格で提供していくべきです。

 今回のコラムでは、周囲が廃業する中で生き残る飲食店のポイントとして、1.会話、2.料理、3.価格、を挙げました。厳しい状況の中、このように取り組んでいる飲食店もありますので、同業の方はご参考にしていただけたらと思います。

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