新型コロナウイルス感染症の影響で発出された緊急事態宣言が終わり、多くの飲食店は通常営業に戻ったため、人材の争奪戦が繰り広げられており、思うように人材が確保できず、結果として人材不足に陥っている飲食店が多くなっています。
そこで今回のコラムでは、人材の流動性が高いガソリンスタンドの現場に長年身を置いた後に、経営コンサルタントとして多くの企業を診てきた経験を踏まえて、どうすれば定着率を向上して人材不足を解消できるのかを見ていきます。
1.既存スタッフの流出を止める方策
スタッフは、自分の職場に不満を抱き、それが高じると退職します。よって、まずは従業員満足度を向上させないと、いくら新規スタッフを採用しても、採用しては退職されるの繰り返しになって、いつまでも人材不足は続いてしまうことになります。では従業員満足を高めるため、具体的にどのようなことを行えば良いのかを以下で示していきます。
(1)業務の標準化を図る
業務の標準化を図るということは、仕事をする上でスタッフの拠り所を作るということであり、このことはスタッフ安心感に繋がります。例えば業務マニュアルを策定することによって、スタッフはそのマニュアルが拠り所となって業務を進めることができます。
ですが、飲食店は顧客が相手ですからマニュアル通りに業務が進まないことも多々あります。そこで「自店はなぜ存在しているのか」という問いに対する答えである経営理念が必要になります。これがあるとスタッフは、マニュアルで対応できない事象が発生しても経営理念に則って判断することが可能となるためです。
なお、経営理念を判断基準にするには内容が抽象的過ぎる場合は、経営理念をより具体的に示した「経営行動基準」を設定することも一考です。
(2)能力開発を行う
人は常に自身の成長を意識するものですから、成長を促進させてくれる職場で働くことはやりがいを高めるものです。よってスタッフの能力開発に力を注ぐ飲食店は人材の定着を促す可能性を高めます。
この際のポイントは、OJT(オンザジョブトレーニング:仕事をしながら能力開発を図る)のトレーナーを代表や店長ではなく、現場の最前線で働く既存スタッフに担っていただくことです。
人に教えるという行為は、自分が学ぶという行為に繋がります。教えていくうちに自分の知識があやふやであることに気付いたり、薄れかけていた知識が強化されたりするものであり、結果として既存スタッフの能力開発に繋がるでしょう。
私自身、ガソリンスタンドの運営会社に勤務し、店長をになっていた頃、これを行った結果、アルバイトスタッフの定着率が高まっただけでなく、教え・学ぶ楽しさに目覚め、そのまま就職してくれた大学生アルバイトが複数人発生しました。なお、トレーナーを担う既存スタッフの業務量が増えますから、代表や店長はそのフォローをする必要があります。
(3)モチベーションを高める
スタッフのモチベーションを高めるには、モチベーションはどのようにすれば高まるのか、その構造を知る必要があります。ここでは、アメリカの臨床心理学者であるハーズバーグ氏が提唱した動機付け=衛生理論を見ていきます。下図は当理論の概念図です。
人は、職務に不満足を覚えるとモチベーションが下がりますが、ハーズバーグ氏はこの状態を「衛生要因が充足していない状態」と定義しました。そして、これら衛生要因を充足させてもモチベーションのマイナス幅は縮小しますが、それはゼロ止まりであり、プラスの領域には及ばないことを実証研究で明らかにしました。
衛生要因のひとつである給与を例にとると、人は高い給与を望みますが、自身のスキル、所属している業界動向からすると、上限額に天井感があり改善をしても、まあこんなものかと思うだけに留まります。
これに対して動機付け要因は、天井感がありません。よって、動機付け要因を充足することにより、モチベーションを高めることが可能となります。特に「お客様にありがとうと言われていたね」「今日はいつもより5分早く出社したね」といった事実を述べていく「承認」は動機付け要因を満たすには比較的取り組みやすい項目です。
今回のコラムでは、人材の定着率を向上させて人材不足を解消する対策として(1)業務の標準化を図る、(2)能力開発を行う、(3)モチベーションを高める、を挙げました。これらにより、既存スタッフの流出を防止させていきましょう。次回のコラムでは、今回の内容を踏まえて新規スタッフの流入策について見ていきます。
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